投資で1億円超えを達成した人を、いつからか「億り人」と呼ぶようになった。ハンドルネーム「合計」さん(30代・投資歴6年)もその一人。合計さんが、自身の投資遍歴を振り返る。
* * *
私が株式投資を本格的に始めたのは2009年です。民主党政権時代の株価低迷期で、リーマン・ショック後の最安値を記録するような時期だったのですが、ドン底のタイミングに始めることができたのはラッキーだったと思います。おかげで、会社員として働きながらも2015年夏に1億円を達成できました。
実は学生時代にネット証券の口座を開いて少しだけ株を買っていたのですが、当時はお金がなかったですから、少額で買えるボロ株にばかり投資していました。ただ、年に2回ほどあった“ボロ株祭り”で数倍になるなんてことが何度も続いて、おいしい思いもしました。
2004年に就職した会社では、経営戦略部で業績の悪い企業の第三者割当増資を引き受けるなど、エクイティファイナンスを担当することになりました。今思い出すとボロ株といわれかねない企業の第三者割当増資も多く、この頃の金融の知識は今も役立っていますね。私は低位株投資を比較的得意としているのですが、この時の経験が大いに役立っていると思います。
アベノミクスが始まった2013年1月は700万円くらいの資金でした。私は投資歴が浅いので極端な上げ相場は経験していませんが、2006年頃のプチ不動産バブル相場は見てきたので、当時を参考に銀行株や不動産株を買い込んで、2月には2000万円に。この頃はちょっとした株式分割ブームがあったので、株価が高くて分割しそうな銘柄を狙ったのも奏功しました。
その後も資産はみるみる殖え、5月には現物のみで3500万円まで殖やすことができました。ところが、大暴落があった5月23日以降はまったくうまくいかず、いったん撤退しました。私は、張るときは大胆に張りますが、「逃げるときは逃げる」というのを信条としています。
今も会社員は続けており、マーケットを見ることができるのは毎朝電車に乗っている8時50分から9時30分頃まで。ラジオ日経を聞きながらスマホの画面で見て売買をしているので、常に監視できるのは1~2銘柄ほど。ですから、相場が難しくて勝てないと思ったらすぐに撤退することを心掛けています。
2014年の夏には増担保規制(※)に着目して6000万円まで殖やすことができました。今でこそよく知られるようになった手法ですが、移動平均線との乖離率をエクセルを使って計算してみたところ、増担保規制された3日目くらいが一番安くなり、5日目には10%ほど上がるという傾向が見えてきたんです。そこで、ユナイテッドやエスケーエレクトロニクスなどの規制銘柄に全力で投資して大きく儲けることができました。
【※増担保規制/ある銘柄の値動きが過熱した時に、それを抑えるために信用取引による担保を通常よりも引き上げる措置】
2015年は自動運転関連のアイサンテクノロジーや、ビジネスホテル「ドーミーイン」を展開するインバウンド関連の共立メンテナンスなどのテーマ株に乗って億超えを達成できました。
まだ浅い投資歴ですが、ボロ株、分割、増担保規制、テーマ株と、株式市場の時流にそれなりに乗ってきたつもりです。そして、チャンスには大きく突っ込み、ダメだと思ったら素早く撤退する。とはいえ、あまり弱腰だとチャンスを逃してしまう可能性もあります。ニュートラルな心理状態が理想かもしれませんね。
※マネーポスト2016年春号