フジテレビのドラマが苦戦している。福山雅治がミュージシャン役で主演している月9『ラヴソング』(フジテレビ系)は、初回視聴率10.6%、4月25日放送の第3話の視聴率が9.4%と低迷。芦田愛菜とシャーロット・ケイト・フォックスがW主演している『OUR HOUSE』は、初回4.8%と今春ドラマのなかで最低を記録した。この2つのドラマが苦戦している理由とは? コラムニストのペリー荻野さんは過去のある作品との共通点を指摘する。以下、ペリーさんの解説だ。
* * *
そんなわけで福山雅治『ガリレオ』以来、三年ぶりの月9主演ということで注目される『ラヴソング』。福山、月9、このタイトルでいったいどんなめくるめく恋愛ドラマが展開するのかと相手役を見たら、あれれ? こんな若い娘? 誰?というのが正直なところだった。ちなみに相手役の藤原さくらは演技未経験の20歳である。
元ミュージシャンで現在は企業カウンセラーの主人公神代公平(福山)が女から女へと渡り歩く男というのも驚きだ。第三話では、天使の歌声を持つさくら(藤原)と公平がライブハウスに出演。歌は素晴らしいが、吃音のためにうまく話せないさくらは、マイクの前で戸惑う場面もあった。だが、公平がギターを鳴らすと、リズムに乗って歌うようになめらかに言葉を伝えられたのだった。
第二話で、流産しかかった友だちを救おうと119番に電話してもうまく話せず、号泣したさくらを見ていただけに、ギターに乗ってうれしそうに歌い、語るさくらの姿は感動的だ。こういう場面を見ていると、ラブストリーでなくても、カウンセラーと天使の歌声娘のサクセスストーリーでもいいのではという気もしてくる。
一方、日曜9時のフジテレビ『OUR HOUSE』。妻を亡くして半年のサックス奏者・伴奏太(山本耕史)が、写真家志望のアメリカ人女性アリス(シャーロット・ケイト・フォックス)と電撃結婚。奏太の三人の子のうち、しっかり者の桜子(芦田愛菜)は、父の結婚に納得せず、アリスにバトルを仕掛ける。セーラー服の芦田は、舌鋒鋭く、長セリフ連発でシャーロットを攻撃。受けるシャーロットも朝ドラマ『マッサン』で鍛えた日本語と英語も交えてヒートアップ。こりゃ大変である。
『ラヴソング』『OUR HOUSE』、どちらも、それぞれにテーマがあり、キャストも揃っているのだが、視聴率的には苦戦している。『ラヴソング』第二話は平均視聴率9.1%、『OUR HOUSE』第二話は第一話より微増して5.0%(ビデオリサーチ調べ 関東地区)となった。
そこで思い出すのが、2012年の日曜9時ドラマ『家族のうた』である。かつてヒット曲を多く出したものの、今は鳴かず飛ばずのロックミュージシャン(オダギリジョー)が、突然転がり込んできた自分の娘やその弟らこどもたちと暮らして大騒動。オダギリのわがままロッカーは面白かったが、3%台の低視聴率が指摘されて、あれよあれよという間に打ち切りと騒がれることになった。
なぜ、今になって『家族のうた』を思い出したかといえば、『ラヴソング』も『OUR HOUSE』も、みんな主役の男がミュージシャンなのである。『OUR HOUSE』の第一話。Tシャツにジャケット、黒サングラスに帽子でいかにも音楽系な山本耕史を見たとき、同じ日曜9時でミュージシャンパパ。攻めるな~と思ったものだ。
浮世離れして見られがちな音楽系男たちが、いかに魅力的に見えるか。魅力的すぎても嫌味に見えるし。結局、放送中のふたつのドラマのカギはここにあるのかもしれない。