「もう朴槿恵・大統領じゃ選挙は戦えない。“別の顔”が必要だ」──韓国の与党セヌリ党内では今、そんな不満が噴出している。逆風下の選挙で何度も勝利し、「選挙の女王」と呼ばれた朴大統領だが、4月13日の総選挙では惨敗し、「女王」称号を返上することになりそうだ。
「選挙前、朴氏は与党内で自らと距離を置く『非朴派』を次々と非公認にし、党から“追放”した。その強引さが有権者に総スカンを食い、議席を2割も減らす歴史的惨敗となった」(現地メディア関係者)
選挙後、朴政権の支持率は就任以来最低の31.5%まで急落。与党内でも朴氏に見切りをつけ、「新・選挙の女王」に乗り換えようとする動きがあるのだ。産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏が解説する。
「党のイメージ刷新のため、美人議員として知られる羅卿ウォン氏を代表か党幹部に担ぐ動きがあります。弁護士出身の羅氏は朴氏より一回り若い52歳。弁舌も嫌味がなく、障害を持つ子供を育ててきた母として好感度も高い。“救党の美女”として期待されています」
与党代表といえば大統領を支える存在なのかと思いきや、そうとは限らないのが韓国の「恨(ハン)の政治」の複雑さだ。
「今回の大敗で党代表を辞任する金武星氏は非朴派の中心的存在で、今回の総選挙の公認騒動でも『まるで独裁国家だ』と朴氏を攻撃して騒動を拡大させた。大統領と与党代表が激しく対立することは珍しくないのです」(前出・黒田氏)
つまり、今後は朴氏と羅氏の間で「女の闘い」が展開される可能性がある。
しかも羅氏には、朴氏との“緊張関係”が取り沙汰された過去がある。李明博・前大統領時代の2011年、羅氏がソウル市長選に出馬した際には、「次期大統領の有力候補だった朴氏が、自分以外の女性政治家に注目が集まることを嫌がって支援しないのではという観測が流れた」(前出の現地メディア関係者)という。
今回の大敗で、ただでさえ求心力低下が避けられない朴氏。その上、党内では「女ライバル」に突き上げを食らう。残り1年10か月の任期は茨の道だ。
※週刊ポスト2016年5月6・13日号