ライフ

動脈硬化もがんも引き起こさない? 悪玉コレステ値の嘘

 健康診断の基準値の中で、最も「信頼性に欠ける」と昨今批判を浴びているのがコレステロール値である。なかでも“悪玉”と呼ばれ、動脈硬化や生活習慣病の犯人とされているLDLコレステロール(以下、LDL)の基準値に対しては、疑問の声が多い。

 現在、健診で採用されているLDLの一般的な基準値は60~119mg/dlだが、欧米の基準と比べて低すぎると指摘するのは、東海大学名誉教授の大櫛陽一氏だ。

「私が神奈川県伊勢原市の40歳以上の住民約2万6000人を8年間追跡調査したところ、LDLが低い人ほど死亡率が高いという結果が出ました。男性ではLDLが100mg/dl未満になると死亡率が急上昇します。逆に最も死亡率が低かったのは140~159mg/dlのグループでした」

 大櫛氏らは、2004年、全国の健診実施機関から集めた約70万人の結果を解析し、健康な人のLDLの基準値を男女別・年齢別に日本総合健診医学会で発表した。

 それによると、50代後半のLDLの正常範囲の上限(mg/dl)は男性186、女性192となり、欧米の189とほぼ一致した。

「60兆個ある人間の細胞はコレステロールが豊富な細胞膜によって守られています。LDLが少な過ぎると細胞膜が 弱になり、ウイルスや細菌が体内に侵入しやすくなって免疫力が低下し、疾病リスクが高まるのです。

 実際、伊勢原市の調査ではLDLが低い人ほど肺炎やがんの死亡率が高いという結果も得られています。また、2015年にはコレステロールの摂取制限は日米ともに廃止されました」(前出・大櫛氏)

 健診の基準を守るほど、病気になるという笑えないジョークが罷り通っているというから恐ろしい。盲信は禁物である。

※週刊ポスト2016年5月6・13日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

二刀流かDHか、先発かリリーフか?
【大谷翔平のWBCでの“起用法”どれが正解か?】安全策なら「日本ラウンド出場せず、決勝ラウンドのみDHで出場」、WBCが「オープン戦での調整登板の代わり」になる可能性も
週刊ポスト
高市首相の発言で中国がエスカレート(時事通信フォト)
【中国軍機がレーダー照射も】高市発言で中国がエスカレート アメリカのスタンスは? 「曖昧戦略は終焉」「日米台で連携強化」の指摘も
NEWSポストセブン
テレビ復帰は困難との見方も強い国分太一(時事通信フォト)
元TOKIO・国分太一、地上波復帰は困難でもキャンプ趣味を活かしてYouTubeで復帰するシナリオも 「参戦すればキャンプYouTuberの人気の構図が一変する可能性」
週刊ポスト
福地紘人容疑者(共同通信社)
《“闇バイト”連続強盗》「処世術やカリスマ性」でトップ1%の “エリート模範囚” に…元服役囚が明かす指示役・福地紘人容疑者(26)の服役少年時代「タイマン張ったら死んじゃった」
NEWSポストセブン
世代交代へ(元横綱・大乃国)
《熾烈な相撲協会理事選》元横綱・大乃国の芝田山親方が勇退で八角理事長“一強体制”へ 2年先を見据えた次期理事長をめぐる争いも激化へ
週刊ポスト
2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン