ビジネス

三菱財閥を創業した岩崎家が断絶の危機に

東京・上野にある旧岩崎邸庭園

 日本には財閥の3大グループが存在する。三菱は1870年、三井は1673年、最も古い住友は1590年に、それぞれ岩崎弥太郎、三井高利、住友政友という創業者によって産声を上げた。いまや3大グループともに、各社の経営トップに創業家の名前はなく、表向きは創業家の存在感は見えてこない。だが、いまなお厳然と、その威光はある。

 それが垣間見えるのが、「三菱開東閣(かいとうかく)」だ。三菱開東閣は伊藤博文の邸宅を創業家二代目の岩崎弥之助が購入したもので、現在は三菱グループの迎賓館として利用される。一般非公開であり、原則として三菱グループの役員クラスのみが利用できる「秘密の館」だ。だが、創業家だけはグループに勤めていなくても出入りできるという。企業の幹部らといまもつながっているからだ。

 品川駅から10分ほど歩くと鬱蒼(うっそう)と生い茂る木々の間からお城のような洋館が姿を現わす。中は、ゆったりとしたソファと暖炉がゴージャスな雰囲気を醸し出し、蝶ネクタイの執事から優雅にワインなどをサーブされる。

 岩崎家は、弥太郎の娘婿4人の中から加藤高明と幣原(しではら)喜重郎の2人を内閣総理大臣として輩出するなど、政財界に強力な閨閥を広げた。

 民進党衆院議員の木内孝胤(たかたね)氏は、岩崎弥太郎の玄孫にあたる。木内議員は少年時代を海外で過ごした後、帰国子女枠のある成蹊中学に編入学した。木内議員が語る。

「成蹊学園設立のスポンサーが三菱4代目の岩崎小弥太でした。編入するとき、『あなたの親戚のおじいちゃんがこの学校を作ったのよ』と言われて、初めて岩崎家を意識しましたね」

 木内議員は慶応大学4年生の時、銀行の仕事に興味を持ち、三菱6代目で当時、三菱銀行営業第一本部長だった岩崎寛弥氏と面会した。

「僕が『三菱銀行に入れてください』というと、寛弥さんはその場で取締役に電話した。その後すぐ、その部下から『入りたいなら、いま決めてください』と言われた。当時は8月15日が就職解禁日だったけど、6代目を訪ねた5月に事実上の内定が出た(苦笑)」(同前)

 銀行では、入社時に岩崎小弥太が掲げた「所期奉公・処事光明・立業貿易」の三菱三綱領を新入社員全員で読み上げさせられたという。岩崎家の「後光」を感じた出来事だった。

 寛弥氏には跡取りぎがおらず、弥之助の分家筋にあたる岩崎透氏を養子に迎えたが、2008年に養子縁組を解消した。寛弥氏は逝去し、岩崎家は断絶の危機を迎えている。

※週刊ポスト2016年5月6・13日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバム、
「『犯罪に関わっているかもしれない』と警察から電話が…」谷内寛幸容疑者(24)が起こしていた過去の“警察沙汰トラブル”【さいたま市・15歳女子高校生刺殺事件】
NEWSポストセブン
NHKの牛田茉友アナウンサー(HPより)
千葉選挙区に続き…NHKから女性記者・アナ流出で上層部困惑 『日曜討論』牛田茉友アナが国民民主から参院選出馬の情報、“首都決戦”の隠し玉に
NEWSポストセブン
豊昇龍(撮影/JMPA)
師匠・立浪親方が語る横綱・豊昇龍「タトゥー男とどんちゃん騒ぎ」報道の真相 「相手が反社でないことは確認済み」「親しい後援者との二次会で感謝の気持ち示したのだろう」
NEWSポストセブン
フジテレビの取締役候補となった元フジ女性アナの坂野尚子(坂野尚子のXより)
《フジテレビ大株主の米ファンドが指名》取締役候補となった元フジ女性アナの“華麗なる経歴” 退社後MBA取得、国内外でネイルサロンを手がけるヤリ手経営者に
NEWSポストセブン
「日本国際賞」の授賞式に出席された天皇皇后両陛下 (2025年4月、撮影/JMPA)
《精力的なご公務が続く》皇后雅子さまが見せられた晴れやかな笑顔 お気に入りカラーのブルーのドレスで華やかに
NEWSポストセブン
2024年末、福岡県北九州市のファストフード店で中学生2人を殺傷したとして平原政徳容疑者が逮捕された(時事通信フォト)
《「心神喪失」の可能性》ファストフード中学生2人殺傷 容疑者は“野に放たれる”のか もし不起訴でも「医療観察精度の対象、入院したら18か月が標準」 弁護士が解説する“その後”
NEWSポストセブン
被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバムと住所・職業不詳の谷内寛幸容疑(右・時事通信フォト)
〈15歳・女子高生刺殺〉24歳容疑者の生い立ち「実家で大きめのボヤ騒ぎが起きて…」「亡くなった母親を見舞う姿も見ていない」一家バラバラで「孤独な少年時代」 
NEWSポストセブン
6月にブラジルを訪問する予定の佳子さま(2025年3月、東京・千代田区。撮影/JMPA) 
佳子さま、6月のブラジル訪問で異例の「メイド募集」 現地領事館が短期採用の臨時職員を募集、“佳子さまのための増員”か 
女性セブン
〈トイレがわかりにくい〉という不満が噴出されていることがわかった(読者提供)
《大阪・関西万博》「おせーよ、誰もいねーのかよ!」「『ピーピー』音が鳴っていて…」“トイレわかりにくいトラブル”を実体験した来場者が告白【トラブル写真】
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《広末涼子が釈放》「グシャグシャジープの持ち主」だった“自称マネージャー”の意向は? 「処罰は望んでいなんじゃないか」との指摘も 「骨折して重傷」の現在
NEWSポストセブン
大阪・関西万博が開幕し、来場者でにぎわう会場
《大阪・関西万博“炎上スポット”のリアル》大屋根リング、大行列、未完成パビリオン…来場者が明かした賛&否 3850円えきそばには「写真と違う」と不満も
NEWSポストセブン
真美子さんと大谷(AP/アフロ、日刊スポーツ/アフロ)
《大谷翔平が見せる妻への気遣い》妊娠中の真美子さんが「ロングスカート」「ゆったりパンツ」を封印して取り入れた“新ファッション”
NEWSポストセブン