国際情報

パナマ文書は中国の脅威ではない 習近平を取締まる法律ない

上海でビル解体を防ぐために貼られたポスター AP/AFLO

 世界を揺るがす「パナマ文書」に中国共産党の現・元幹部クラスの9人の名前があることが判明した。中国当局はネットで「パナマ文書」関連の言葉を閲覧禁止とし、徹底的に隠蔽している。習近平国家主席がそこまで過敏に取り締まるのはなぜか。中国ウオッチャーのジャーナリストで拓殖大学教授の富坂聰氏が分析する。

 * * *
「パナマ文書」をめぐりアイスランドの首相が辞任するなど、文書に名前が挙がった各国首脳が窮地に立たされている。中国では、習近平国家主席の姉の夫(義兄)の名前が挙がったことから、「習近平が親族を使って不正蓄財をしているのではないか」と疑惑の目を向けられている。

 そもそもパナマ文書とは、パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出した顧客情報が記載された資料のこと。50か国140人以上の政治家の名前が挙がっているとされており、習近平の義兄のほか、現職の党中央政治局常務委員・劉雲山や張高麗、歴代の党幹部クラスの子弟・親族ら9名が公表された。

 パナマ文書が中国にどのような影響を及ぼすかは今後を注視する必要がある。しかし私は、この問題が直接的には習近平体制の土台を揺るがすほどの脅威にはなり得ないだろうと見ている。そもそも今の中国に、習近平を取り締まる機関や法律は存在しない。

 また、習近平は極めてスキャンダルに強い政治家だといえる。2012年に米国の通信社ブルームバーグが習近平に関わる金銭スキャンダルを報じた時も、目立った影響はなかった。

 当時はネット規制も今に比べれば緩やかで、多くの中国人はその記事について知っていたが、街中で彼らに聞くと「共産党幹部はみんなやっている。同じやるなら習近平がいい」と異口同音に語っていた。

 加えて、共産党トップのスキャンダルは国民にとっては縁遠い話でもある。自分や家族の健康・生命が脅かされ、明日の生活に関することなら、人民は直情的に反応する。

 直近でいえば、地方政府幹部の失言に端を発する騒動がいい例だ。今年3月6日、全人代(全国人民代表者会議)で陸昊・黒竜江省党委員会副書記兼省長が、省内に半年以上も賃金を受け取っていない炭鉱労働者がいるにもかかわらず、「炭鉱現場で働く約8万人の労働者について言えば、わずか1か月の給料の遅配も起きていない」と発言した。

 これを聞いた黒竜江省の炭鉱労働者は激怒し、「北京を目指せ」と全国の炭鉱労働者に呼びかけたため、大きな炭鉱を抱える地方政府は臨戦態勢に入らざるを得ない事態が起きた。習近平の金銭スキャンダルは、こうした問題とは趣が違う。

※SAPIO2016年6月号

トピックス

依然として将来が不明瞭なままである愛子さま(2025年3月、神奈川・横浜市。撮影/JMPA)
愛子さま、結婚に立ちはだかる「夫婦別姓反対」の壁 将来の夫が別姓を名乗れないなら結婚はままならない 世論から目を背けて答えを出さない政府への憂悶
女性セブン
28歳で夜の世界に飛び込んだ西山さん
【インタビュー】世界でバズった六本木のコール芸「西山ダディダディ」誕生秘話、“夢がない”脱サラ社員が「軽い気持ち」で始めたバーダンスが人生一変
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《“イケメン俳優が集まるバー”目撃談》田中圭と永野芽郁が酒席で見せた“2人の信頼関係”「酔った2人がじゃれ合いながらバーの玄関を開けて」
NEWSポストセブン
六代目体制は20年を迎え、七代目への関心も高まる。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
山口組がナンバー2の「若頭」を電撃交代で「七代目体制」に波乱 司忍組長から続く「弘道会出身者が枢要ポスト占める状況」への不満にどう対応するか
NEWSポストセブン
母・佳代さんのエッセイ本を絶賛した小室圭さん
小室圭さん、母・佳代さんのエッセイ本を絶賛「お母さんと同じように本を出したい」と自身の作家デビューに意欲を燃やす 
女性セブン
日本館で来場者を迎えるイベントに出席した藤原紀香(時事通信フォト)
《雅子さまを迎えたコンサバなパンツ姿》藤原紀香の万博ファッションは「正統派で完璧すぎる」「あっぱれ。そのまま突き抜けて」とファッションディレクター解説
NEWSポストセブン
国民民主党の平岩征樹衆院議員の不倫が発覚。玉木代表よりも重い“無期限の党員資格停止”に(左・HPより、右・時事通信フォト)
【偽名不倫騒動】下半身スキャンダル相次ぐ国民民主党「フランクで好感を持たれている」新人議員の不倫 即座に玉木代表よりも重い“無期限の党員資格停止”になった理由は
NEWSポストセブン
ライブ配信中に、東京都・高田馬場の路上で刺され亡くなった佐藤愛里さん(22)。事件前後に流れ続けた映像は、犯行の生々しい一幕をとらえていた(友人提供)
《22歳女性ライバー最上あいさん刺殺》「葬式もお別れ会もなく…」友人が語る“事件後の悲劇”「イベントさえなければ、まだ生きていたのかな」
NEWSポストセブン
東京高等裁判所
「死刑判決前は食事が喉を通らず」「暴力団員の裁判は誠に恐い」 “冷静沈着”な裁判官の“リアルすぎるお悩み”を告白《知られざる法廷の裏側》
NEWSポストセブン
永野芽郁
《永野芽郁、田中圭とテキーラの夜》「隣に座って親しげに耳打ち」目撃されていた都内バーでの「仲間飲み」、懸念されていた「近すぎる距離感」
NEWSポストセブン
18年間ワキ毛を生やし続けるグラドル・しーちゃん
「女性のムダ毛処理って必要ですか?」18年間ワキ毛を生やし続けるグラドル・しーちゃん(40)が語った“剃らない選択”のきっかけ
NEWSポストセブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《田中圭に永野芽郁との不倫報道》元タレント妻は失望…“自宅に他の女性を連れ込まれる”衝撃「もっとモテたい、遊びたい」と語った結婚エピソード
NEWSポストセブン