オバマ米大統領が本格的に検討している伊勢志摩サミット来日時の「広島訪問」。米国内での反発はあるものの、核廃絶を目指す国際社会からは歓迎の声が高まっている。ところが、そうしたムードに水を差したがるのは、やはりかの国の習い性。韓国メディアが一斉に猛反対しているのだ。
朝鮮日報は「オバマ大統領が広島に行ってはならない理由」という見出しで、〈オバマの広島訪問は、日本が被害者という印象を与え、アジアの加害国に対して反省と謝罪を終えていないという事実を覆う結果につながる。北東アジアの歴史的な感情を十分に考慮しないまま踏み出すオバマの一歩は、むしろ混乱だけ起こす可能性がある〉(4月16日付)と批判。
中央日報は「中曽根康弘―安倍晋三につながる日本の右翼本流は核武装を1950年代から着実に推進してきた」とする韓国のキム・ジンヒョン元科学技術処長官のこんな寄稿を掲載した。
〈オバマは日本の中曽根と現首相・副首相に過去の発言を取り消させ、日本の二律背反的な核武装政策の真意を聞き、答えを得る手続きを踏んだ後に、広島訪問を検討すべきである〉
この〈過去の発言〉とは、中曽根氏が1971年、防衛庁長官時代に「日本憲法は防衛用核兵器を禁止していない」と発言したこと、また2006年に中川昭一氏による「選択肢としての核」発言が物議を醸した際、安倍首相が「議論は自由だから言論封鎖することはできない」、麻生外相(現副総理)が「一つの考え方としていろいろな議論をしておくことは大事だ」と発言したことを指す。
さらに聯合ニュースは日中韓の歴史問題研究者であるスタンフォード大学アジア太平洋研究センター長、シン・ギウク教授のインタビューを紹介。
〈オバマが広島を訪問した場合、安倍首相は南京を訪問し、また韓国に来て慰安婦のお婆さんたちの手を握らなければならない〉
原爆犠牲者への慰霊と結びつけて昨年末の日韓合意で決着したはずの慰安婦問題まで蒸し返し、再び外交問題化させようという牽強付会な論調だ。「加害者と被害者という立場は、千年過ぎても変わらない」(朴槿恵・大統領)ということか。
しかし、オバマ大統領の広島訪問は日本人だけでなく、当時日本で被爆した在日韓国人を含めた原爆犠牲者への慰霊でもあるはず。難癖のために自国の犠牲者まで“冷遇”するのはやり過ぎでは?
※週刊ポスト2016年5月6・13日号