芸能

月9藤原さくら ネットでは賛否も「感受性豊か」と識者絶賛

月9に抜擢された藤原さくら(『ラヴソング』公式HPより)

 福山雅治(47才)が主演している月9『ラヴソング』(フジテレビ系)。相手役として起用されたのが藤原さくら(20才)だ。大抜擢に反発の声も多いが、テレビ解説者の木村隆志は「類いまれな演技力」と絶賛する。その根拠とは? 以下、木村さんの解説だ。

 * * *
 演技未経験で“月9”ヒロインに大抜擢されただけに、藤原さくらさんの関連記事がアップされると、「低視聴率のフォローに必死。ゴリ押しがスゴイ」「事務所の先輩である福山雅治さんのバーター」などのネガティブなコメントが飛び交いますが、私は決してそれが正しいとは思いません。

『ラヴソング』は、福山雅治さん演じる“神代広平の再生物語”と、藤原さくらさん演じる“佐野さくらの成長物語”という2つの軸があって焦点が絞りにくい上に、“27歳もの年の差恋愛”に違和感を抱く人がいるなど、序盤は印象面で損をしたのは明らか。しかし、藤原さくらさんに焦点を絞って見てみると、驚くほどその魅力に気づかされます。

 美しい女優陣の中に入ると、藤原さくらさんは決して際立つ美人というわけではないものの、1話と3話で見せたライブシーンを筆頭に、見る人をグッと引き付ける求心力は、共演の水野美紀さん、夏帆さん、山口紗弥加さんら美人女優に負けていません。

 演技経験が少ない人は、「台本を読み込んで役作りをしよう、役に入り込もう」と思いがちですが、そうするほど生き生きとした表情ができないもの。しかし、藤原さくらさんは、「役を演じる」というより、「私なりの感性で役を表現してみよう」と体当たりで挑んでいるように見えます。

 その感性の豊かさが表れているのが“目の演技”。思い詰めたような悲しげな眼差し、物思いにふけるような遠い目、絶望したような力のない瞳、さらに一転して、意志の強さを感じる鋭い視線など、吃音でうまくしゃべれない役柄を逆手に取るようなベテラン女優顔負けの表情を目だけで表現しています。

 今、藤原さくらさんは、「他人と同化する」演技の難しさや充実感を初めて体感しているのでしょう。吃音について相当学んでいる様子が伝わってきますし、初回ラストの名曲『500マイル』を歌うシーンでは、「歌う楽しさに気づいて自然に涙があふれた」そうですから、もしかしたらあのシーンで「演技とは何たるか」のかすかな手応えをつかんだのかもしれません。

 そんな姿を見ていて、「誰に似ているかな……」と考えたとき、2人の女性アーティストが浮かびました。

 1人目は、初演技でのヒロイン大抜擢が同じ中島美嘉さん。2001年のドラマ『傷だらけのラブソング』(フジテレビ系)で女優デビューし、すぐにアーティストとしてもブレイクしましたが、感性を全身で表現するような体当たりの演技は藤原さくらさんと共通するものがあります。

 2人目は、同じ福岡出身で、10代のころ地元の音楽スクールに通っていたなど経歴が似ているYUIさん。2006年の主演映画『タイヨウのうた』で見せた憂いと希望が交錯するような目の演技は、藤原さくらさんとオーバーラップします。

 ただ、「その他にも、かつて似たムードの人がいたような……」と考えたときに思い浮かんだのが、今回の相手役である福山雅治さん。思えば、福山さんも連ドラデビュー作の『あしたがあるから』、それに続く『愛はどうだ』(ともにTBS系)のころは、アーティスト志向がにじみ出るような感性の豊かさを押し出した演技スタイルでした。モテ男や優男を演じていても、時折見せる鋭い視線や悲しげな眼差しなどの“目の演技”で魅了した福山さんに、現在の藤原さくらさんがシンクロします。

 今後の見どころは、ズバリ藤原さくらさんの秘めたる爆発力。2話の絶叫しながらギターを叩き壊すシーンでは、女優・藤原さくらの大いなる可能性を感じさせただけに、次に感情を爆発させるシーンでは、どんな演技を見せるのか? また、今は終始とがらしている唇が終盤にかけて収まり、さらに魅力的なヒロインになっているのではないか? さらなる成長が期待できますし、それを見守り、見届けるのが『ラヴソング』の醍醐味と言えます。

 藤原さくらさんの大抜擢は、「いいものはいい」「必ず理解してもらえる」という関係者の願いを込めたものであり、見る側はできるだけ色眼鏡を外して純粋な目で見たいところ。藤原さくらさんが女優業を続行させていくのかわかりませんし、私は業界内に一切のしがらみはないのですが、将来が楽しみな女優であることに疑いの余地はありません。

「わずか4話の演技で、女優としての資質があることを立証した」という意味では、視聴率はともあれ、上々のスタートを切ったのではないでしょうか。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』などに出演。さらに、タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。

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