家電量販店に行くと、多くの中国人観光客が日の丸家電を「爆買い」している。しかし、後日談を取材すると、日本では考えられないようなエピソードが飛び出した。北京市の40代女性はこう話す。
「日本製のマイナスイオンドライヤーは早く乾くと思って買ったんですが、なかなか乾かないですね……。だって、ドライヤーを靴下の口に突っ込んでスイッチを入れると、すぐ止まっちゃうんですから。結局、衣類用には止まらない中国製のドライヤーを使っているから、2台の使い分けが面倒になっちゃいました」
これは、中国人の“一般的なドライヤー使用法”だ。ドライヤーの説明書には、〈人の毛髪の乾燥・整髪にのみ使用する(ペットへの使用や、衣類・靴などの乾燥目的に使用しない)〉としっかり書いてある。
日本人でも服を乾かすのにドライヤーを使っている人がいることは事実だが、靴下の口に突っ込むようなことをすればすぐ止まる。それは、温度が上がって安全装置が働くからだ。中国製にはそれがないから、靴下乾燥には“便利”らしい。
このように、期待して日の丸家電を買ったはいいものの、「中国流」の使い方に向かないと知って勝手にガッカリしているケースは数多くある。
やはり爆買いされている洗濯機は、彼らにとって衣類だけを洗うものではない。北京から東京を訪れ最新のドラム洗濯機を買った男性の話だ。
「ジャガイモの泥がうまく洗えなくて……。デリケート洗いのコースだと弱くて泥が落ちないし、ガンコ汚れを洗うコースだとしっかり落ちるけどジャガイモまで傷む気がする。どうすれば上手に洗えるんですかね?」
それまで使っていた中国の洗濯機はちょうどよく食材の汚れが落ちていたらしい。中国では、野菜を洗濯機で洗うことは珍しくないというから、日本の家電量販店の売り場では「洗濯機でジャガイモを洗わないでください」という注意書きが必要かもしれない。
ちなみに野菜を洗うことで野菜くずが詰まって故障するケースも多い。また、ザリガニを食する風習がある地域では洗濯機でザリガニを洗うと「脚が取れずに、ヌメリが取れる」(華南地方の男性)ことで重宝されているらしいが、そのヌメリが故障につながることがある。
※SAPIO2016年6月号