国際情報

中国ネットの最新NGワード パナマ文書の隠語「姐夫」も

北京の街並み(写真:アフロ)

 中国のネット上では、中国共産党に批判的な言葉はNGワードとされ、書き込めばたちまち削除、検索することもできない。1989年6月の「天安門事件」に至っては、年や月日を表す「八九」や「六四」まで検閲・禁止対象となっている。中国出身の漫画家・孫向文氏が、最新の「NGワード」事情を報告する。

 * * *
 ネットでの言葉狩りは今年に入り、特に厳しくなっている。

 世界中で話題のパナマ文書(巴拿馬文件)は、習近平・中国国家主席の姉の夫で実業家のトウ家貴氏をはじめ、中国共産党幹部の子弟や親族の名前が挙がったため、この言葉自体がNGになった。

 中国検索サイト大手・百度や中国版ツイッター・微博で検索すると、数件ヒットするものの記事を見ようとすると「削除されています」と表示されてしまう。その後、パナマ文書の隠語として姐夫(「姉の夫」の意味。「姉の夫の件」などと使われた)が大流行したが即座に規制された。

 同様に、最近、大流行するも禁止された言葉に趙家の人々(趙家人)がある。これはそもそも、共産党の後ろ盾のある大手ゼネコンが不正競争によって落札した案件を巡り、「玄関で見張る人は野蛮人、後ろの人は趙家人」という題の匿名ブログが公開されたことがきっかけで大ヒットした。

 ここで言う趙家とは、魯迅が著した『阿Q正伝』に出てくる金持ちの家のことで、転じて「富や権力を持つ人たち」を意味する。共産党関係の人が金も権力も独占していることへの風刺であり、特に習氏やその家族になぞらえ、批判したり、揶揄したりするための隠語として中国のネット民は使用していた。

 その言葉が禁止されると、ネット民は対抗策を編み出した。「趙」は中国の簡体字で「そうにょう(走)にカタカナのメ」。「メ」の部分を共産党を表す“鎌とハンマー”に置き換えたイラストで表現する者が現れたのだ。これなら検閲の文字検索に引っかからない。

 趙家人から派生して、走家人なる語も生まれた。これは中国の愛国主義者を揶揄する言葉。特に、ネット上で中国共産党を賛美する書き込みをして報酬を得ている「五毛党」を指して使われたが、走家人はやがてNGに。

 趙家人からは他にも趙国や趙国人、真趙(とても共産党らしい人)や精趙(完璧な共産党支持者)なども生まれたが、いずれも現在は禁止されている。
 
 ちなみに、これらの削除対象ワードは一度NGとなっても、数か月あるいは数年間で解禁されることがあることを付言しておく。

●そん・こうぶん/中国浙江省杭州市出身の32歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。2013年来日。現在、月刊漫画誌『本当にあった愉快な話』(竹書房刊)にて「日本に潜む!! 中国の危ない話」を連載中。著書に『中国のヤバい正体』、『中国のもっとヤバい正体』(いずれも大洋図書刊)などがある。

※SAPIO2016年6月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン