年々、暑くなる夏に備えて「みどりのカーテン」をつくるよう呼びかけ、ゴーヤーの種などをプレゼントする自治体が増えている。種の配布やつくりかたの講習会が開かれるのは、ゴールデンウィークの頃からが多い。いまや国民的関心となっている緑化の試みを、鉄道会社がどのように取り組んでいるのか、ライターの小川裕夫氏がリポートする。
* * *
従来、みどりの日とされてきた祝日は4月29日だった。祝日法が改正されたことにより、2007(平成19)年から4月29日は”昭和の日”に改められた。
みどりの日は5月4日に移動。今年は、みどりの日が5月4日に移動してから、ちょうど10年の節目にあたる。
みどりの日を祝日にしているように、政府は緑を増やそうと躍起になっている。しかし緑は年々減少の一途をたどっている。
近年、国土交通省や地方自治体などは公園計画を積極的に進め、緑のある空間づくりに力を入れている。それでも農地や森林といった大規模な緑地が急速に失われているため、緑の減少に歯止めがかからない。緑が減少した都市はヒートアイランド化する。ヒートアイランド化が加速する昨今、政府や地方自治体はそれらに有効な手立てが打てていない。
ヒートアイランド対策が後手に回る中、”鉄道”が多角的な意味で注目されている。ひとつは、CO2の排出量が自動車などに比べて少ないこと。CO2抑制・削減という観点から見れば、鉄道の利用は地球温暖化の防止に貢献することになる。
そして、鉄道が注目されているもうひとつの理由として、緑化が挙げられる。鉄道は駅や線路などの建築材料の大半はコンクリートや鉄で賄われている。そのため、どうしても熱がこもりやすい。そうした中、率先的に緑化に取り組み始めたのは路面電車を運行する事業者だった。
すでに、海外では路面電車の軌道内が緑化されていることは、当たり前の光景になっている。そうした海外事例を参考に日本で最初に軌道緑化を始めたのは高知県を走る土佐電鉄だったといわれる。その後、鹿児島市電が追随。鹿児島市電は軌道緑化に並々ならぬ力を入れ、いまや軌道緑化のお手本のような存在になった。鹿児島市電が軌道緑化で一定の成果を出したことを受け、各地の路面電車の事業者も緑化に力を入れ始めた。
都電荒川線を運行する東京都交通局は、軌道緑化に挑戦した過去がある。しかし、都電荒川線の軌道緑化は、あえなく失敗。軌道緑化は単純に線路内に芝生を植えればいいというものではない。車両が上を走ることを想定し、排熱や風に耐えられる適性が求められる。そうした反省を踏まえて、東京都交通局は昨年から軌道緑化に再チャレンジしている。
しかし、沿線を緑化したところで鉄道会社の収益には結びつかない。それにも関わらず、沿線を緑化する必要はどこにあるのか?