大きくえぐれた山々、跡形もなく崩れ落ちた橋、陥没した道路、倒壊した家屋──田畑が広がるのどかな光景を一変させた熊本地震の傷跡はあまりにも大きい。
その地震は他人事ではない。今回の原因となったとみられる活断層は日本中いたる所に潜んでいるからだ。銀座、築地、月島、四谷、浅草、田端、飯田橋、江戸川、荒川、春日部、熊谷、草加、高崎ほか首都圏の街にも「隠れ断層」が貫いている。
東海地震が警戒される名古屋を中心とした中部地区も安心できない。2012年、名古屋大と広島大のチームが名古屋市内を南北に縦断する未知の活断層2本の存在をつきとめた。
それぞれ10kmほどの長さで、「堀川断層」は名古屋城の北から名古屋駅の東を通り、熱田神宮(名古屋市熱田区)付近まで続く。もう1本の「尼ケ坂断層」は名鉄瀬戸線尼ケ坂駅付近から南へ延びる。
堀川断層は一部が名古屋高速都心環状線に、尼ケ坂断層は約5kmが高速道路の直下だという。
「航空レーザ測量などの精密な測量によって得られたデータをもとに活断層が存在するという結論に達しました。検証を続けたい」(調査チームの広島大・後藤秀昭准教授)
名古屋市では南海トラフ地震の被害想定で死者を6700人、建物の倒壊焼失を6万6000棟と見積もっているが、都心の活断層地震が発生すれば、それでは済まない可能性が高い。
※週刊ポスト2016年5月6・13日号