中国のネット上では、中国共産党に批判的な言葉はNGワードとされ、書き込めばたちまち削除、検索することもできない。1989年6月の「天安門事件」に至っては、年や月日を表す「八九」や「六四」まで検閲・禁止対象となっている。中国出身の漫画家・孫向文氏が、最新の「NGワード」事情を報告する。
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ネットでの言葉狩りは今年に入り、特に厳しくなっている。派生語の中でユニークなのは趙王回車である。「趙王」(これも削除対象)は習近平のことで、「回車」はパソコンのキーボードのリターンキー(エンターキー)のこと。
習近平が使うパソコンのエンターキーに目印の赤いシールが貼ってあったことがニュース映像で流れたことから、本人は文字を打てず、エンターキーを押すだけなのではとネット民は疑った。「趙王回車」は習のパソコン音痴を揶揄する隠語として使われ、NGに。
「習大大」(シーダーダー)といえば、人民による親しみを込めた習近平の呼称だが、「大大」を一文字で書けば、「シービー」と読み、たちまち侮蔑の言葉となる。
習近平の中国語読み「シージンピン」の言い換え・パロディとして洗禁評(習政権による言論弾圧を風刺した言葉)、吸金瓶(AIIB設立時、カネ集めへの批判として生まれた)などもあったが、いずれも禁止用語となった。
また、「習近平 娘」を検索する習 女児(女児 習)や、習近平のかつての愛人とされる夢雪も今や削除対象である。
一連の規制で注目すべきは、「習近平」に関する言葉がことごとくNGになったことだ。中国共産党の地方幹部や役人らの汚職をいくら批判しても構わないが、習氏やその親族に触れることは許されない。
ちなみに、これらの削除対象ワードは一度NGとなっても、数か月あるいは数年間で解禁されることがあることを付言しておく。
●そん・こうぶん/中国浙江省杭州市出身の32歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。2013年来日。現在、月刊漫画誌『本当にあった愉快な話』(竹書房刊)にて「日本に潜む!! 中国の危ない話」を連載中。著書に『中国のヤバい正体』、『中国のもっとヤバい正体』(いずれも大洋図書刊)などがある。
※SAPIO2016年6月号