不倫をした芸能人や著名人が批判の的となり、窮地に陥る例が相次いでいる。夫と同じ店で働くパートの妻が店長と不倫をしたところ、結局、自分たちだけ解雇されてしまった場合、この裁定は正当なのだろうか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
夫婦でスーパーのチェーン店で働いていましたが、店長と妻の不倫が発覚。思わず店長を殴った現場を他の従業員に目撃され、本社に連絡されてしまいました。結果、私と妻は解雇、店長は口頭注意のみでした。この裁定には納得できません。このような場合、どこに不服の申し立てをすればよいですか。
【回答】
店長を殴った、あなたの気持ちは理解できますが、職場での暴力はまずかったですね。さて、会社の裁定に対する不服申し立ての方法ですが、あなたは店長の口頭注意と均衡を失しているとの考えですが、端的に解雇は重過ぎるということだと思います。そうであれば、まず会社に解雇処分の理由の説明を求めてください。
会社は労働基準法の定めにより、解雇理由を明らかにした証明書を発行する義務があります。会社の解雇理由が不満であれば、個別労働関係紛争として、労働局長に相談し、紛争調整委員会のあっせんを受けることが考えられます。
また、解雇は無効だからいまだ雇用契約が有効であるとして、雇用契約上の地位を確認するように求め、労働審判を地方裁判所に申し立てることもできます。前者は学識経験者からなる3人の委員により、実情に即して解決できるようにあっせんしてくれます。
後者は裁判官と労働問題に明るい専門家2人で構成される労働審判委員会が権利関係を踏まえて実情に即した審判をしますが、裁判と違い、迅速に判断されますが、その前に解決の見込みがあるときは調停が試みられます。
ところで、あなた方ご夫婦の解雇が妥当であるのか、ご質問の事情だけでは私には判断できません。しかし、多くの就業規則では、職場での暴力を懲戒解雇の事由としているように思います。
他方、職場の男女関係だけであれば、特に風紀を損なわず、秩序を乱すようなものでなければ、勤務評定に影響することは別として、私的な行動ですから懲戒の対象にならなくても不思議ではないと思います。その意味では、奥さんまで解雇された理由が私には想像がつきません。あるいは他に何かしらの事情があるのかもしれないので、慎重を期したいところです。
【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2016年5月6・13日号