連日テレビや新聞で報じられる熊本地震の被害状況に、「明日は我が身か」と身構えている人も少なくないだろう。同じ規模の地震がもしも大都市で起こったら、さらなる大惨事となることは間違いない。
2013年12月に国の有識者会議が発表した被害想定によれば、首都直下型地震による死者数は、最悪の場合約2万人、建物全壊・焼失棟数は約61万棟に上るという。首都直下型の大地震が起きたとき、様々な状況下において我々はいったいどんな行動をとればいいのか。「究極の二択」があなたの生死を分ける──。
【避難時に持つのは、リュックか、スーツケースか】
頑丈なスーツケースは荷物の「中身」を守るにはいいが、地震で避難する際には不向きだ。防災都市計画研究所会長の村上處直氏が語る。
「地震の後には地面にガラスの破片や瓦礫などが散乱しているので、スーツケースを持ち歩くのは大変です。しかも荷物を持つために手が塞がれてしまうので、危険回避上のリスクもある。その点、リュックは両手が自由になるので、避難の際にはとても便利です」
ただし、リュックに重い荷物を詰め込むと、余震で揺れた際などにバランスを崩して後ろに転倒してしまう危険性がある。足元も悪い状態なので、避難の際は最低限必要なものだけをリュックに詰め、身軽な姿で逃げよう。
【倒壊した建物の中では、叫ぶか、物を叩くか】
熊本地震では住宅損壊が9049棟を数えた(4月20日現在)。阪神・淡路大震災でも建物の倒壊によって多くの犠牲者が出たように、首都直下型地震でも、「倒壊した建物に閉じ込められる」という状況は十分に起こりえる。
いざそうなると、パニックになって必死に叫んでしまいそうだが、「大声を出せば体力が奪われるし、喉も渇く。しかも人の声はあまり遠くまで通らないケースもあります。できれば金属製の物を叩いて継続的に音を出すほうがいい」と村上氏は語る。
建物が倒壊した時に生死を分けるのは、運に加えて、一瞬の避難だという。
「木造家屋の1階部分が完全に倒壊し、梁などが落ちてくるようなケースでも、数十センチの隙間に入れるかどうかで生死が分かれます。揺れを感じてから倒壊までのわずかな時間に、広いところ、外に近いところに逃げることが必要です」(村上氏)
※週刊ポスト2016年5月6・13日号