この春、締めつけない「楽なブラジャー」が売れているという。憧れの存在が幸福感に包まれているとすれば、我々男性にとっても喜ばしいことである。大人力コラムニスト・石原壮一郎氏が想いを馳せる。
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風薫る5月。街ゆく女性がすっかり薄着になり、私たち男性としてもブラジャーに対する関心や愛着が一段と高まらざるを得ない季節です。そんな折も折、まさに胸躍り胸ときめくニュースが飛び込んでまいりました。
5月6日付の毎日新聞でひときわ輝いていたのが〈しめつけないのが旬 「楽なブラジャー」売り上げ3倍〉という記事。「ブラジャーに新風が吹いている」という書き出しで、楽な着心地を求める女性が増えて、ノンワイヤのブラジャーが売れている状況を報じています。背景には、技術力の進化や震災や不況の影響による生活の変化があるとか。
難しい話はさておき、ともかく世の女性の胸を取り巻く状況が、私たちが深く愛するおっぱいをめぐる状況が、大きく変化しているようです。自分でブラジャーを着けるわけではない大半の男性としては、このニュースをどう受け止めるべきか。「関係ないんじゃないの」とスルーしてしまうのは大人の男の名折れだし、おっぱいにも失礼です。
いったい何割の女性が「楽なブラジャー」を身に着けているのか、その正確な割合はわかりません。ただ、記事によるとトリンプ、ワコール、ピーチジョンといった各メーカーから、縫い目がなかったりノンワイアだったり動きやすかったりするタイプが続々と販売されているとのこと。目の前にいる女性が、あるいは街ですれ違った女性が「楽なブラジャー」をしている可能性はかなり高いと考えていいでしょう。
何かの拍子に、魅力的な女性の魅力的な胸のふくらみに目が行ってしまったとします。それ自体は男性として仕方がないことであり、恥じる必要はありません。とはいえ、しげしげと見つめるわけにはいかないし、お叱りを受ける可能性も生じるので、早めに目を逸らしたあとは残像を頼りに想像をやわらかくふくらませましょう。
「この女性は『楽なブラジャー』をしているかもしれない。ということは、彼女のおっぱいは今、伸び伸びと開放感を味わっているということか。ああ、よかったなあ」
そんなふうにおっぱいの気持ちになっていっしょに喜べば、おっぱいと一体化したような気分が味わえるはず。ふくらみが控え目な女性の場合は、
「楽なブラジャーが広まったことによって、きっと彼女のおっぱいも、寄せて上げたり谷間を作ったりする無理のある仕打ちから解放されたに違いない。ああ、よかったなあ」
と、時代の変化がもたらしたであろう幸福を祝福しましょう。