中国の李克強首相が4月24日午前、四川省雅安市内を首相専用車両で移動中、2台の大型SUV車が猛スピードで接近。李氏の車に衝突しようとしたが、運転手のハンドルさばきでSUVをかわし、衝突を免れた。李氏の専用車の襲撃に失敗したSUVはそのまま猛スピードで逃げ去っており、警備に当たった武装警察部隊は何者かが李氏の命を狙ったとみて、犯人の行方を追っている。
米国を拠点にする中国問題専門の華字ニュースサイト「博聞新聞網」が武装警察部隊の関係者が明かした独自情報として報じた。
李氏はこの日、3年前の2013年4月20日に雅安市で起きた四川地震3周年追悼記念集会に出席するため、同市を訪れていた。襲撃されたのは同市の地震追悼広場に向かう途中の公道で、犯人グループは李氏一行の移動経路などを事前に入手し、待ち伏せしていたものとみられる。
李氏は四川省政府幹部や武警察の警備要員らとともに移動中で、李氏の専用車は車列の真ん中に位置していた。それを狙うように、SUV2台が側道から突っ込んできたものの、運転手がうまく追撃をかわし、他の警備車両がSUVを追走。2台はそのまま猛スピードで走り去ったという。
李氏はけがもせず、何事もなく、広場での追悼行事をこなし、その日の午後、同省廬州市や成都市を視察した後、同日中に飛行機で北京に帰着した。
四川地震では186人が死亡し、行方不明者は21人、重軽傷者は1万1248人に上っている。
捜査に当たっている武警当局は犯人グループが李氏の移動のルートや視察の日程などを事前に知っていた可能性が高いと考えられることから、犯人グループは四川省政府や中央政府の幹部に近い関係者であるとみて慎重に調べているという。
事態を重く見た公安省上層部は同省幹部を四川省に派遣して、捜査に乗り出している。目撃情報によると、李氏を襲ったSUVは2台とも大型で、機関銃なども搭載していることが分かっており、犯人グループは軍関係者である可能性も否定できず、今後大掛かりな捜査態勢が敷かれることになりそうだ。
中国では習近平国家主席を狙った暗殺未遂事件が少なくとも6件発生しているほか、反腐敗運動を指揮している王岐山・党中央規律検査委員会書記の場合は20回以上も暗殺未遂事件が発生していると伝えられる。
李氏の暗殺未遂事件については今回が初めてとみられるが、反腐敗運動や来年の第19回党大会を控えて、政権内部での権力闘争が激化していることがうかがえる。