2015年10月、巨人・笠原将生投手ら3選手が野球賭博をしていた事が発覚。更に2016年3月には、巨人・高木京介投手も関与で1年の失格処分となった。現役のプロ野球選手が賭博行為に手を染め、しかも自軍の試合を掛けの対象にしていた事実は、世間に大きな衝撃を与えている。(2016年5月10日更新)
野球賭博の発覚とその経緯
2015年10月5日、巨人・福田聡志投手が野球賭博に関与していたと球団が発表
福田の元へ男性A氏が借金を取り立てに来て発覚
事件は税理士法人勤務という男性A氏が、川崎市にあるジャイアンツ球場を訪れ、福田の借金を取り立てに来たことで発覚した。福田は2014年、高校野球、巨人戦を含むプロ野球、そしてメジャーリーグの試合を対象に賭けを行なった。100万円以上負けたところで賭けを止めようと連絡を絶ったが、そのことでA氏の取り立てが始まったという。
10月21日、NPBは、笠原将生と松本竜也の2投手も野球賭博行為をしていたと発表
再び球界を震撼させる新事実が発覚した。巨人・福田聡志投手が野球賭博に関与していたとして球団から告発を受け、調査を行なっている日本野球機構(NPB)の調査委員会が、新たに巨人の笠原将生投手と松本竜也投手が関与していたことを発表した。
球界でも様々な情報
「セ・リーグ某球団の大物コーチが関与」との情報
「コーチだけではなく、球団職員も関与しているとの話で、すでにその球団には調査が入り、内部が大わらわになっているとのことだった」(スポーツジャーナリスト)。そのコーチは、現役時代はパ・リーグの球団で活躍。指導力はもちろんながら、独自の人脈を持ち、監督からも絶大な信頼を得ている人物だ。ちなみに職員も元選手で、同じくパ・リーグ球団で活躍した過去を持ち、コーチを経た後、現在は球団の要職にある。
某球団の主力選手5人が、裏カジノに出入りしているとの噂
「球団の内部調査で発覚し、その対応に追われているといいます。店の防犯カメラに彼らの姿、それも顔がはっきりと判別できるくらい映っており、言い逃れができない状況だとか」(球界関係者)。裏カジノの利用は違法。バックには反社会勢力の存在があるといわれ、利用客も処罰される可能性がある。10月11日付の『東京スポーツ』が、笠原が名古屋の裏カジノに行ってトラブルになり、それを球界の大物OBに処理してもらったと報じた。
OBの反応
江本孟紀氏「プロ野球のイメージと信頼は失墜した。各球団は徹底的な調査をすべき」
「プロ野球は再び社会から厳しい目を向けられ、イメージと信頼は失墜した。この問題から背を向けることなく、NPB(日本野球機構)を中心に、巨人をはじめ各球団は徹底的な調査をすべきだ。ファンの信頼を取り戻すためにも、うやむやで終わらせてはダメです」
広岡達朗氏「コミッショナーは不正を未然に防ぐのが仕事。コミッショナーの意味を今一度考え直すべき」
金田正一氏「罰を与えたとしても、再起の機会を与えてやらないと」
「二軍の選手というのはいわば『野球の未成年者』です。球界は外部の誘惑も多い。チーム内で安い給料の子たちはどうしても付け込まれやすい立場にある。特に最近は昔に比べて、チーム内の貧富の差が大きいからね。球界にはこういった“子供”を指導する“親”が必要なんだ。今回の責任は、指導するべき立場の二軍監督やコーチたちにあることを肝に銘じてもらいたい。今回、野球賭博に手を染めてしまった若者を切り捨てたらいかんよ」
3選手は無期限失格処分に
2015年11月10日、3選手を巨人は契約解除、NPBは無期限失格処分を決定
疑惑選手が出入りした焼き肉店店長 騒動発覚後失踪
「野球賭博をやっていた選手たちが出入りしていた都内の焼き肉店の店長をしていた元球界OBが、事件発覚と同時期に失踪、店が改装に入ったのも意味深で笑った(笑い)」(スポーツ紙セ・リーグ担当記者D)、「『週刊ポスト』が書いたセ球団大物コーチの賭博関与疑惑(2015年11月6日号)。あの記事が出た後、そのコーチは球団に辞意を申し出たらしい。球団は慰留したそうですけどね」(スポーツ紙遊軍記者)
解雇された3選手 ドラフト指名日のコメント
「光栄です。今の気持ちを忘れずに強気のピッチングをしていきたい」。指名されてこうコメントしたのは、2005年大学・社会人ドラフトの希望枠で入団した福田聡志投手。そう、野球賭博で解雇されたうちの一人である。まさか10年後に、「軽はずみに興味本位で始めてしまった。今後はわからない。野球しかしてこなかったので……」という羽目になるとは、本人も想像していなかったに違いない。他にも今回解雇された選手の指名当日のコメントを紹介しよう。(フリーライター・神田憲行氏のレポート)
高木京介投手の関与も発覚
2016年3月8日、巨人・高木京介投手が野球賭博に関与していたと球団が発表
球団によると、高木は2014年4月下旬の試合前に笠原元投手から野球賭博を持ちかけられ、軽い持ちで手を出した。計8~9試合を対象に現金を掛けたが、2014年夏以降は全て断り、やっていないという。
『週刊文春』の取材を受けて、緊急会見を開いた
高木京介投手が野球賭博に関与していたと巨人の久保博球団社長らが緊急会見で発表したのは3月8日、火曜日の夜のことだ。
巨人・高木京介の球団会見の裏に駆け引きと御用メディア存在
2016年3月22日、高木京介を巨人は契約解除。NPBは1年間の失格処分を決定。取締役オーナーの白石興二郎、代表取締役会長の桃井恒和、取締役最高顧問の渡辺恒雄の3名が辞任。
野球賭博事件で松本の父怒る「なぜ高木だけ処分が軽いのか」
野球賭博問題で巨人を契約解除された松本竜也(23)の香川県にある3階建ての実家の前で、父・泰記氏を直撃した。「いま、取材はすべてお断わりしています。本人がいくらマスコミを通じて野球を続けたい、メジャーでやりたいと言っても、現状ではマイナスの印象しか持たれないですから。父親としての思いは、どうして高木(京介)だけが1年(の失格処分)で、息子は無期なのか。私も直接、巨人側の担当者と話をしましたが……決定権を持つのはNPB(日本野球機構)ですよね」
2016年4月29日、笠原将生容疑者が、野球賭博問題による賭博開帳図利幇助容疑で警視庁に逮捕された。
他球団でも円陣の「声出し」等による金銭授受が続々発覚
12球団中、8球団で慣習として行なわれていた。球界OBの反応は?
声出しで金を取ったりしていたとの事、苦しい練習の合間のゲーム感覚でやってしまったのか。私たちの頃、練習中大きな声を出すのは当然のことでしたが、そこにお金は介在していませんでした。… https://t.co/f1AFaSKVwv— 北別府 学 (@m_kitabeppu) 2016年3月16日
野球評論家の張本勲氏が3月13日、TBS系「サンデーモーニング」で言及
「勘違いしてもらいたくないんですよ。野球賭博と一緒にしてもらいたくない」などと持論を述べた。意見を求められた張本氏は、「こんなことはどこの世界でもやってますよ。官僚であろうが、政治家であろうと」とコメント。(ハフィントンポスト)
なぜ球界に野球賭博が蔓延したのか
野球賭博の現場をよく知るX氏「野球賭博はなくならない」
「1日6試合のギャンブルが出来て、プレーオフや日本シリーズを含め、長いシーズン楽しめる。気楽に手を出すファンがいるのも事実。賭博の申し込みは今でもすべて電話のみで受けつける。メール履歴などの証拠を残さないためだ。一見さんもお断わり。昔のように限度を超えて追い詰めると、家族が警察にタレ込むので深追いはしない」(X氏)
規模縮小されたが今も月に数千万円単位のカネ動く
野球賭博は暴力団の有力な資金源だ。「野球賭博は1960年代に高知の暴力団が始め、関西の暴力団が大きくしたといわれる。今でも関西では盛んだし、地方では最大のシノギにする組も少なくない。かつては数千億市場ともいわれていた」(広域指定暴力団のフロント企業といわれる会社関係者)。「1991年に暴対法が施行されたことや、2010年の角界の騒動で、規模はかなり縮小されたが、今でも月に数千万単位のカネが動いている」(X氏)
野球選手に近づく魔の手
裏カジノから野球賭博に関与するケースも
「裏カジノは、通常では考えられないような高レートで賭けが行なわれている。当然元手も必要なので、金銭的に恵まれているアスリートである野球選手はターゲットになりやすい。このような裏カジノをきっかけに、選手が野球賭博に誘われるケースもあるようです。深みにハマって大損した場合に、“野球賭博をやれば取り返せるよ”と誘われるパターンが大半」(裏カジノに詳しいジャーナリスト)
主力選手は警戒心が強いが準レギュラー陣は隙多い
「末端の胴元はカタギであることも珍しくない。知人だからと断わりきれずに始めて、気がつかないうちに取り込まれていることは非常に多い。ちなみに末端の胴元は“枝”と呼ばれるが、これは万が一摘発された時などにポキッと折ってトカゲの尻尾切りをして、トップ組織まで影響が及ばないようになっているから。実は枝自身もトップの胴元の顔を知らないケースが多く、なかなか“本丸”まではたどり着けないようになっている」(暴力団関係者)
ヤクザと野球選手が交際に至る過程
息のかかったカタギの人間を後援会にもぐりこませ、選手と親しくさせる。高級時計をプレゼントするなど、親交を深めせるという。「シーズン中に“ちょっと肩に違和感があって投げられない”といった情報が手に入るようになる」(暴力団関係者)。暴力団関係者にとっては、“仕事”の役に立つうえ、「タニマチ」然として振る舞うことで、周囲に大きな顔ができる。選手にとっても、豪勢な接待や受け取る金品は大きな魅力だ。選手の中には、夜の世界の顔である暴力団関係者に一種、憧れの念を抱いている者もいる。