激増する中国人観光客は日本経済に大きな恩恵をもたらす一方、トラブルも頻発している。世界的に急速に広がる「民泊」、つまり宿泊施設ではない一般マンションなどを宿として利用する中国人の行動に、住人が禁止を求める声を上げているのだ。民泊事情に詳しい不動産ジャーナリストが解説する。
「日本に居住する中国人が貸す側になって、同胞に部屋を貸すケースが増加しています。その利用者が宿泊先でトラブルを引き起こし、苦情が出る例が多い」
たとえば、マンションに併設された居住者専用のジムやプールを大勢で占拠して住人が利用できなくなったり、共有スペースやエレベーターで喫煙、ポイ捨てしたりといった問題だ。
本誌記者は実際にネットを介して、中国人が提供する新宿のマンションの1室を借りてみた。すると、エレベーター内にこんな貼り紙があった。
〈お願い 当マンションは「ウィークリーマンション」や「簡易宿泊施設」の賃貸・ご利用は禁止となっております 管理組合〉
隣には同じ内容を中国語で書いた注意書きも貼られていた。
部屋の貸し主に会ってみると、留学に来ているという19歳の中国人女子大生だった。叔父が借りている部屋を民泊用に貸し出しているのだという。民泊が禁止されている旨を伝えると、彼女は片言の日本語でこう話した。
「多分、ダイジョブ。管理人はあまり厳しくないからバレない。でも前に一度、『カギはどこにあるの?』と入り口の管理人室に聞きに行ったバカな客がいたけどね。でもどうにかゴマカせた」
貼り紙の効果は全くなさそうだ。その部屋の隣に住む50代女性はこう嘆く。
「先月、マンションの近くでいくつもスーツケースを引いた中国人の家族に英語で声をかけられ、『ここに行きたい』と地図を見せられたんです。見ると私の住むマンションで、しかも隣の部屋だった。それからは、隣の出入りが気になってしょうがない」
※週刊ポスト2016年5月20日号