GW直前のよく晴れた日、東京拘置所から1人の男性が保釈された。元プロボクサーで慶応大学法科大学院生だった小番一騎被告(25才)だ。
彼は昨年8月、妻の勤務先だった東京都港区にある弁護士事務所を急襲。妻に肉体関係を強要したとして、上司の国際弁護士(42才)を複数回殴った上で、局部を枝切りばさみで“チョッキン”。切り取った局部を共用トイレに流して、傷害と銃刀法違反に問われ、昨年10月から裁判が続いている。
このセンセーショナルな事件を引き起こしたのは、妻の嘘だった。不倫関係が夫にバレるや「セクハラに悩んでいた」などと主張したのだった。それゆえ妻の供述には日本中が注目していた。
そして4月の公判で明かされたその内容は、法廷を凍りつかせた。自分のために凶行に走った夫のことを「ペットのようだと思っていた」と暴露。また修羅場のハイライトでさえ、「あ、切っちゃった」と一言…。あまりに他人事な彼女の発言に、正直慄然とした。自分のついた嘘が招いた事の重大さがまるでわかっていないのか──。精神科医の片田珠美さんはこう説明する。
「この妻は決定的に想像力が欠如している。自分の言動で相手がどう反応するのか、どう行動するのか想像できず、他人の痛みに共感することができない。夫をペットだと思うことで感情を切り離し、局部切断にしても“切った”と思うだけで、上司がどれだけ痛くて怖い思いをしているのかがわからないんです。何をしても、何を見ても現実感がない『離人症』の可能性が高いと考えられ、おそらく『アレキシサイミア(失感情症)』に陥っているのでしょう」
この聞き慣れない「アレキシサイミア」という医学用語は、楽しい時にワーッと喜べなかったり、怒りたいときに怒れなかったり。想像力が乏しく、自分の感情に気づくことも、表現することも難しい状態を指す。心身症やうつ状態でしばしば出現する症状で、今、こういった“不感症”な人たちが増えているという。