色気は売っても心までは売ってはいけない──こんな133の警句が並ぶ冊子が話題だ。大阪・北新地社交料飲協会の初代理事長(故人)が1980年に作った「ホステス心得帖」は2015年11月に再出版され、版を重ねている。男が読んでもためになる「お水の教科書」全10章を紹介しよう。(2016年5月14日更新)
「クラブ山名」山名和枝ママ(北新地社交料飲協会副理事長)
【1】美しさの度合と個性
性格が誠実で素直でないと、本当の美人には見えない。どんなに顔・形が良くても心の化粧も忘れずに。幾ら整形手術をしても眼に険が表れるからだ。眼の輝きは、整形できない。
「CLUB The Courte」・なのさん
【2】お客様との対応
お客様は、自分の何か(持ち物・人柄・仕事・容貌……その他あらゆるもの)について、それをいち早く認められ、ホステスに誉められたいものである。それが何であるか、早く見つけて、口に出し誉めること。貴女だって、お客様に同じ事をしてほしいではないか。イヤ味の無いお世辞は、人間関係を良くする。
「クラブ山名」の絢乃さん
【3】飲み方と飲ませ方
酔わなければ接待できないようでは、一人前ではない。世の中には、一滴も飲めないで抜群の売上げを達成しているホステスは、幾らでもいる。むしろ、そういう人の方が、お酒で誤魔化せないだけに真剣である。
「クラブ山名」の悠子さん
【4】座持ちのテクニック
お客様が「また来ようか」と思われるのは最後の5分間が勝負。席でどんなにふざけても、お見送りの時はケジメをつけて、キチンと丁寧に挨拶すること。お客様が振り返った時、「また来よう」と思わせる殺し文句が言えて一人前。
「CLUBのぶ」の結菜さん
【5】同僚からの評判
お目当てのホステスが欠勤している時の、お客様の失望を考えてみよう。その失望について、貴女は責任を感じているか。「私は売れっ子だから、少々休んでもお客様は必ず来る」と思うのは、自惚れである。そのような自惚れは、必ず自らを不幸にする。
「クラブ宮上」の紗月さん
【7】貴女自身の私生活
店を一歩外へ出たら、世間一般の常識人として通用する人間であること。一目見てホステスと判るような、派手な服装は好ましくない。生活の区別がつかぬようでは、良い奥さんになれない。
「CLUBのぶ」の香璃さん
【8】経済生活の設計
スポンサーの援助を前提とした生活は、思ったより短く、そして必ず破綻がくる。今の彼氏は、貴女が50才になっても、優しく面倒を見てくれるわけではない。もしそうなら、呆れるほど惚れているか、バカであるか、10万人に1人ぐらいの立派な男である。
「CLUB O’」・れいかさん
【9】プロとしての資格
いつも、何かにつけて貰ったり、ご馳走になっているためか、何でもタダでしてもらう癖がつき、ホステスは貰い下手が多い。どんなに些細な事にでも、素直に「ありがとうございます」と口に出して謝意を表すること。他人の好意に甘え、必要以上に期待し、そして感謝の気持ちが持てないのは、人間の屑である。
「CLUB The Courte」・なのさん
【10】べからず集33ヵ条
腕を組む。イスの背に深くもたれる。ふんぞり返る。くわえ煙草。ゲップ。タバコの灰をポンポンとはたいて落す。灰皿を取り替えない。タバコを吸わない人の前で、煙突のごとく吸う。音をたてて、飲む、食べる。マッチの火をそのまま吹き消す。食べ物をほおばって食べながら、喋る。時刻の質問に、正確に答えない。ラスト後に、お客様をアッシーにして負担をかける。グチ話。口臭がくさい。