いわゆる「ゲス騒動」から不倫バッシングがつづいているが、今季は不倫ドラマが目白押しだ。『不機嫌な果実』(テレビ朝日系)、『毒島ゆり子のせきらら日記』(TBS系)、『コントレール~罪と恋~』(NHK)、『僕のヤバイ妻』(フジテレビ系)と、実に4本が同時に放送中なのだ。
ドラマ史において、これまでも「不倫モノ」は昔から確立された1つのジャンルだった。コラムニストの今井舞さんは、「普遍的なテーマ」だと指摘する。
「古くは八千草薫さんが不倫妻を演じた『岸辺のアルバム』(1977年)や、金妻という流行語を生んだ『金曜日の妻たちへ』(1983年)、社会現象となった『失楽園』(1997年)など、不倫をテーマにヒットを飛ばしたドラマは数多くあります。
最近になって不倫ドラマが増えたという印象はありません。常に需要があるテーマで、恋愛を盛り上げるガソリンみたいなもの。リアルな不倫とは別物として、安全地帯から無責任に感情移入できるがゆえに人々に受け入れられてきた」
唯一変わったのは、不倫する女性の心の描き方だ。
「昔のドラマは、“不倫がテーマですよ”と大々的に打ち出していません。登場人物が自然と不倫しているんです。子育てしたり、旦那にご飯を作ったり、どこにでもある日常のなかに並列して不倫がある。近年の不倫ドラマは、“不倫している私!”というのが全面に描かれすぎて、逆にリアリティーがなくなってしまっている部分はあるかもしれません」(今井さん)
不倫ドラマは、「夫の不倫に悩む女」から、「抗えない不倫に悩む女」に進化し、今「夫や彼氏以外の男性と積極的に恋する女」という新たなステージに突入した。
『コントレール』では、夫を殺めてしまった男に惹かれ自らキスする石田ゆり子(46才)、『毒島~』では二股をかけながらもさらに既婚者であるライバル紙記者と関係を持つ前田敦子(24才)など、“肉食系女性”の姿が艶やかに描かれている。
不倫に翻弄される弱き女性は消え、女性もまた“加害者の1人”として不倫の恋にのめり込む姿が描かれている。控えめ雰囲気の石田ゆり子やアイドルの前田敦子が“肉食女”や“積極不倫”をするというエンタメ性は象徴的だ。
「不倫する女性を正当化できないのも時代性でしょう。最近の不倫ドラマでは生々しさが極力排除されてしまっています」(前出・今井さん)
たとえ描かれ方が変わったとしてもいつの時代もドラマに“不倫の恋”は不可欠だった。そこにあるのは憧れでも蔑みでもない。“女”である私たちは心の奥底でチクリと動く感情につき動かされて、今日もまたチャンネルを合わせてしまう――。
※女性セブン2016年5月26日号