来年4月に入社する学生の就活が始まっている。今は、会社説明会への参加やエントリーシートの作成に追われつつ、6月からの面接試験の準備を始めている時期だ。その面接試験では、「3秒で結果が決まる」という説がある。3秒といえば、面接会場に入ってあいさつをしただけで終わってしまう時間。本当にこんなにわずかな時間で合否が決まってしまうのか? 心理学的な背景について、駒沢女子大学教授で心理学者の富田隆氏が解説する。
* * *
“3秒”という具体的な数字が正しいかはさておき、ファーストインプレッション、第一印象というのは、数秒で決まるという研究結果が多いのは確かです。
アメリカなどでは、第一印象を良くするにはどうしたらいいかという研究が、組織的に行われています。そして結果は、「実際に話が始まる前に、ほぼ印象が決まる」というものでした。
どうしてそうなるのかというと、人の第一印象は、非言語的なメッセージでだいたい決まるからです。立ち居振る舞い、表情、姿勢、着こなし、ヘアスタイル、女性の場合ならメイク。そのような“外見”と呼ばれる部分で、ほとんど決まってしまう。7割~9割ぐらいは外見で決まると言われています。
「人を外見で判断してはいけません」とよく耳にするのは、逆に言えば、人間は外見で人を判断してしまう動物だと、昔から知られていたからです。「馬子にも衣装」ということわざにもそれは表れています。
ですから、ファッションの選択から始まって、所作の上品さなどの非言語的な部分で、人はチェックしているつもりがなくても無意識に判断しているので、話し始める前に印象が決まってしまうのです。
第一声も大事です。面接では初めに、決まりきったことしか言いませんよね。「わたしは○○です」「よろしくお願いします」など。ですから内容ではなくて、声そのものが大事です。その人が気持ちのいい声音か、感じがよくない声色なのか、怯えたような声色なのか。
つまり、声の出し方が大切なのです。がなり立てれば印象が悪くなりますし、逆に、蚊の鳴くような声でなにを言っているのかわからない、というのもダメです。
相手にきちっと伝わるような必要充分の声量と、話し方の早さやリズム。それも非言語的な部分ですよね。元々の声質が恵まれていれば言うことはないのですが、訓練によって改善することも可能です。
少し余談ですが、声の出し方が綺麗で、きちんとした喋り方ができていると、その人のルックスまでよく見えるという研究もあります。女子アナが綺麗に見えるのは、見た目をさらによくする力を、話し方が持っているからと言えます。
ですから声、話し方の印象は、ファーストインプレッションのだいたい2~3割の影響を与えてしまう。これでほぼ決まるのです。
以上のことから、面接でのポイント、注意点を挙げていきます。第一に、自分の主観的な好みのヘアスタイルはやめるべきです。自分がいいと思っていても、採用者にとって好ましいヘアスタイルではない場合はよくあります。
例えば、女性は額を隠したがる傾向にありますが、髪をまとめて額を出しているほうが面接で有利なことは、統計で出ています。理屈ではないのですが、あえて額を隠したがる意味付けをすると、小顔に見せたい、若く見せたい、ありのままの自分を出すことをどこかで恐れている。だから額を隠すという小細工をしているとみなされるので、社会人として、仕事仲間にしてもらう段階では、避けるのが無難です。
首の角度も重要です。ネット社会になるほど、井の中の蛙大海を知らずで、自信過剰になっている人が増えているように思います。すると、無意識的に顎が上に突き出されてくる人が意外に多いんです。それは、周りの人を見下しているというサインに受け取られかねません。
そうした点を意識すれば、第一印象をよくできます。逆に言えば、ファーストインプレッションは、一瞬で評価が好転する可能性を秘める武器になり得るということができます。