放送作家でコラムニストの山田美保子氏が独自の視点で最新芸能ニュースを深掘りする連載「芸能耳年増」。今回は、クドカンドラマ『ゆとりですがなにか』を分析。
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「岡田(将生)くんや松坂(桃李)くんという、勢いのあるゆとり世代の俳優たちと共演できてすごくうれしかったです」とは、11日、主演映画『秘密 THE TOP SECRET』完成報告会見に登壇した生田斗真の弁。言われた岡田は顔をくしゃくしゃにしながら、一拍おいて「ゆとりですがなにか?」と返し、松坂は「言っちゃったよ」と笑った。
このもようが全国のワイドショーでオンエアされたため、岡田と松坂が出演する日本テレビ系ドラマ『ゆとりですがなにか』の番宣が他系列でもされることとなってしまった。
一部で「ゆとりなし」とも言われている視聴率の同ドラマに、生田が援護射撃をしたのは、『ゆとりですがなにか』の宮藤官九郎脚本作品に、生田本人が複数出演しているから。生田は、このドラマを楽しみに見ているに違いない。
「クドカン初の社会派ドラマ」を演出するのは『Mother』『Woman』や、映画『謝罪の王様』『あやしい彼女』でもおなじみの日本テレビのスター演出家、水田伸生氏。
出演は件の岡田将生、松坂桃李に加えて、若き演技派・柳楽優弥、「日本アカデミー賞」最優秀主演女優賞に輝いた安藤サクラ、さらには、太賀や矢本悠馬、加藤諒ら、フルネームは知らなくても、出演していた作品名や役どころはしっかり浮かんで来る、若き個性派俳優がひしめきあっている。
他にも、真野響子、でんでん、吉田鋼太郎といったF3、M3にも刺さる俳優たちが出ているのだが、ターゲット層の若者以外になかなかチャンネルを合わせてもらっていないようだ。
ドラマのみならず、世帯視聴率を安定させるには年配層に見てもらっていないとキツイ。そんなことから「視聴率には、ゆとりなし」と書かれてしまっているのだが、ターゲット層にはしっかり刺さっており、Huluで配信される日本テレビ系の番組ランキングでもトップ3に入っているのだ。
岡田、松坂、柳楽は、リアル“ゆとり世代”であり、役柄も“ゆとり第一世代”にあたるアラサー世代。食品会社の営業マンなのに、居酒屋への出向を命ぜられた岡田は、慣れない作業と、雰囲気の異なる同僚に振り回され、教員役の松坂は理解しがたい上の世代の父兄や、生徒らとうまくコミュニケーションをとれず、さんざんな目に遭ったりしている。
「おっぱい」というワードを異なるバージョンで連呼する風俗店の客引き役の柳楽は、実は東大合格を目指し、11浪中という設定。妻子もいる。
一人一人の役が実に魅力的で、誰からも目を離すことができないのは、水田氏ならではの愛ある演出のなせるワザ。
私の知人のスポーツ紙デスク(アラフィフ男性)は、「このドラマは平成の『ふぞろいの林檎たち』(TBS系)だ」と断言する。