妻がやってくれていた家事や子育てを一手に背負いながら、働き続ける父子家庭は、母子家庭とはまた違うつらさがある。そのつらさのすべてはわからないが、お金がないと困ることは確実にわかる。誰にでも死は平等に訪れるが、遺族にとって死は平等ではない――このままでいいのか遺族年金制度。
この遺族年金には男女格差が存在する。まず、遺族基礎年金は、2014年3月までに妻を亡くした夫には支給されなかった。ファイナンシャルプランナーの平野泰嗣さんはこう語る。
「従来は夫が働いて、妻が専業主婦の家庭がほとんどでした。つまり、妻が亡くなっても、夫は金銭的に困らないものとされていたんです。ただ、共働き、専業主夫など多様な働き方がある現代で、疑問視される声が高まっていきました」(平野さん・以下「」内同)
2014年4月以降は、満18才未満の子供のいる夫にも遺族基礎年金が支給されるように制度が改定された。
「現在、専業主婦の妻が亡くなっても、夫に遺族基礎年金が出ます」
だが、2014年3月までに妻が亡くなった父子家庭には、遺族基礎年金が支給されないままだ。例えば、2011年に起きた東日本大震災で妻を失い、男手一つで子供を育てている父親は、遺族基礎年金を受けられない。また、遺族厚生年金に関しても、年齢制限という男女差が存在する。
「妻の死亡時に夫が55才以上でないと、夫は遺族年金を受け取れず、子供が受け取ることになります。それに対して妻が受給者の場合は年齢制限はありません。夫婦どちらでも実質的に支給はされますが、法的には55才未満の夫は受け取れません」
ちなみに、夫の死亡時に40才以上65才未満の妻で、生計を同じくする子がいない場合、遺族厚生年金に中高齢寡婦加算が加わる。金額は遺族基礎年金の4分の3と決まっていて、2016年は、年間58万5100円になる。この制度も妻を失った夫には支給されない。
※遺族年金の対象は、遺族が年収850万円未満の世帯。中高齢寡婦加算は、遺族厚生年金と遺族基礎年金を受け取っていた子のいる妻が、子供が満18才に達したため、遺族基礎年金を受け取れなくなった場合にも加算される。その他、詳細は日本年金機構のHPなどでご確認ください。
※女性セブン2016年5月26日号