4月末に発売されたある新書が、ゴールデンウィーク直後、日本中の書店から姿を消した。紀伊國屋書店新宿本店の売り場担当者が語る。
「本当に異常なスピードで売れて、連休が終わったタイミングで品切れとなりました。全国ほぼすべての店舗が同じ状態だったそうです。ネット上では中古品には3~4倍の値段がついているらしく、在庫補充後も転売しようと買い占め客が殺到したため『1人1冊まで』という表示を今も出しています」
その異例のベストセラーが、『日本会議の研究』(扶桑社新書)である。
テーマとして取り上げられた「日本会議」は1997年に設立された団体で、公式ホームページでは、〈私たちは、美しい日本の再建と誇りある国づくりのために、政策提言と国民運動を推進する民間団体です〉としている。安倍政権との密接な関わりが指摘されており、近年は政界関係者を中心に注目を集める存在となっていた。
とはいえ、今回の研究本の著者である著述家・菅野完(すがのたもつ)氏の知名度も高くはなく、同書の初版は8000部に過ぎなかった。売れ出したのは著者の菅野氏が発売直後に「日本会議側が出版停止を求めてきた」と公表してからだ。
自身のツイッターで、〈なぜ出版直後の本に文句をつけられなきゃいけないのか〉〈かかる言論弾圧に対し抗議します!〉などと発信。それが大きな話題となり、売り切れ続出の事態に発展した。
出版元の扶桑社は本誌の取材に「日本会議の椛島有三事務局長から、弊社社長宛に個人的に出版停止の申し入れがあったことは事実です」(第二編集局局長・渡部超氏)と答え、騒動は収束する気配がない。
※週刊ポスト2016年5月27日号