出版停止の申し入れが話題となり、異例のベストセラーとなっている『日本会議の研究』(扶桑社新書)。同書でテーマとして取り上げられた「日本会議」とは1997年に設立された団体で、安倍政権との密接な関わりが指摘されており、近年は政界関係者を中心に注目を集める存在となっていた。
著述家・菅野完(すがの・たもつ)氏による同書の初版は、8000部に過ぎなかった。売れ出したのは著者の菅野氏が発売直後に「日本会議側が出版停止を求めてきた」と公表してからだ。版元の扶桑社は、本誌の取材に対し、「日本会議の椛島有三事務局長から、弊社社長宛に個人的に出版停止の申し入れがあったことは事実です」(第二編集局局長・渡部超氏)と答えている。
日本会議とはどんな団体なのか。自民党のある若手議員は、「日本会議」に異様とも取れる反応を見せた。
「彼らは数百万の票を動かせる。だから、『自分も入っておかなければ』という思いは正直あります。議員会館に彼らが陳情に来るのを見かけますし、先輩議員からは『第二次安倍内閣になって以降は影響力がさらに増した』と聞かされる。誰かに強制される訳ではないですが、『安倍さんを支持するならば日本会議に入らなきゃいけない』という空気があるんです」
日本会議の会員数は約3万8000人、47都道府県それぞれに地方本部があり、公式HPによれば市区町村などには地方支部が計226ある。まず驚かされるのは、役員の顔ぶれだ。
日本会議の役員名簿には、元最高裁判所長官、東京大学名誉教授、神社本庁総長、日本医師会会長、日本遺族会会長、靖国神社宮司、明治神宮宮司、比叡山延暦寺代表役員、崇教真光教え主など、学界・法曹会の要職経験者に加え、宗教団体のトップが宗派の垣根を超えて名を連ねる。
国政、特に安倍政権との“関わり”を匂わせるのは、超党派の国会議員で構成される「日本会議国会議員懇談会」の存在だ。『日本会議の研究』の著者である菅野氏の話。
「2014年に発足した第二次安倍改造内閣では、安倍晋三・首相を筆頭に麻生太郎・副総理兼財務相、菅義偉・官房長官、高市早苗・総務相ら閣僚19人のうち実に16人が日本会議国会議員懇談会に所属していました。改造を経た現在も20人中10人と半数が同会のメンバーです」
首相補佐官や官房副長官、副大臣などまで含めるとさらにその数は増える。与野党を含めた国会議員全体では280~300人と報じられている。