4月に出版された『日本会議の研究』(菅野完・著/扶桑社新書)が異例のベストセラーになっている。「日本会議」は1997年に設立された団体で、憲法改正などを掲げ、安倍政権との密接な関わりが指摘されている。
だが、初版は8000部に過ぎなかった。売れ出したのは著者の菅野氏が発売直後に「日本会議側が出版停止を求めてきた」と公表してからだ。
この日本会議とはどのような団体なのか。前身となる団体を含め、日本会議の事務方のメンバーと数十年前から交流のある村上正邦・元自民党参議院議員会長は、組織の内実をこう語る。
「古くから日本会議にかかわっているメンバーたちが原点としているのは宗教法人生長の家(※注)を設立した谷口雅春先生の教えです。谷口先生は現行憲法を占領基本法だと批判していて、憲法改正というならばまず明治憲法の復効を宣言し、その後に改正すべきだと主張していた。諸悪の根源は現憲法ですよ。
【※注/谷口雅春氏が1940年に創設した宗教団体。1964年から憲法改正など保守的な政治活動を展開してきたが1980年代は政治活動は停止】
私のように谷口先生を尊敬している人間は今も少なくない。でも、今の日本会議は谷口先生の思想を押しやって、憲法改正だけを主張している。うわべだけ法を改正すればいいと主張している、本質が抜けた集団になってしまった。谷口先生の憲法論はどこへいってしまったのか」
外から分かる現象だけを追っていると、政権に絶大な影響力を持つ組織のように見えるが、内実を知る人に聞くと「日本会議は決して“怪物”ではない」という声が聞こえてくる。村上氏はこう続けた。
「マスコミはあたかも日本会議が安倍内閣を取り仕切っているような言い方をしているが私は不思議だ。政府とともに自主憲法制定・改正を一緒にやっていこうといっているに過ぎない」