中国のミサイル配備に対してフィリピンで起こった抗議デモ Reauters/AFLO
ここ数か月、南シナ海を舞台にした中国の攻勢が、1~2年前とは違ったレベルで進んでいる。ジャーナリストの櫻井よしこ氏が、最新の動きを解説する。
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中国の南シナ海の軍事拠点化の動きが凄まじい勢いで加速しています。中国の横暴を黙認し、何ら有効な手だてを打てなかったオバマ大統領の任期が残り1年を切ったため、その間に「取れるものはすべて取ってしまおう」というつもりでしょう。
中国はオバマ大統領の任期中は南シナ海を我が物とする「100年に1度のチャンス」と捉えていると考えられます。
パラセル諸島(西沙諸島)のウッディー島では2月19日、中国が長距離地対空ミサイルを配備したことが明らかになりました。その4日後には中国人民解放軍の主力戦闘機であるJ-11とJH-7が配備済みであると米国防総省が発表しました。J-11は日本の航空自衛隊の第4世代戦闘機F-15と米国のF-16に匹敵するもので、中国はJ-11の量産に尽力し、航空戦力においても力をつけようとしています。
ウッディー島ではさらに射程400kmの対艦巡航ミサイルが配備されたと見られています。この海域における軍事拠点化はすでに仕上げの段階にきていると見るべきでしょう。
スプラトリー諸島(南沙諸島)では、中国が造成した7つの人工島のうち4島でレーダー施設が建設され、新たな灯台の運用も始まりました。
次なるターニングポイントは、スカボロー礁を含む中沙諸島です。現在のところフィリピンから奪い取って実効支配を続けている状況ですが、ここが埋め立てられ、ミサイルやレーダーなど軍事拠点を作られてしまったら、南シナ海はすべて中国の軍事力にカバーされることになり、完全に“中国の海”と化してしまいます。
※SAPIO2016年6月号