今年でサービス開始から10周年を迎えたツイッター。ユーザー同士の交流を楽しめる一方で、いわゆる炎上騒ぎといったネガティブな側面があるのも事実だ。ツイッターがもたらした閉塞感について、エッセイストの岸本葉子さんはこう嘆く。
「いつの時代もなんらかの不満があって、なんらかのはけ口を求めるとは思うけれども、簡単に他者を攻撃するツールがなかったので、他のことで紛らわせていました。深酒だったり、友人に愚痴を言い合ったり、もしくは、なにくそ、こんちくしょうって別のことに集中して物事に取り組んだりとか、良い方にエネルギーを向けられました。それには時間もかかるし、労力もかかる。だから、便利になった現代では、楽なほうにいってしまう人が多いのでしょう。
特に今の日本は、雇用状況にしても経済状況にしても、将来の保証がないという意味では貧しく厳しい状況ですが、モノばかりはあってアンバランスですよね。とても豊かなはずなのに豊かでない自分に対してどうしていいかわからない焦りがある。あるものへの感謝より、ないものへの嫉妬や焦りが強い気がします」
奇しくも現在放送中の連続テレビ小説『とと姉ちゃん』(NHK)の物語の大テーマは“心を豊かに、ていねいな暮らし”。『とと姉ちゃん』のモデルとなった、『暮しの手帖』創刊者・大橋鎭子さんが1969年に開始し、今も続いている連載『すてきなあなたに』には、日々の生活を彩る小さなエッセンスがたくさん詰まっている。
もちろんツイッターもインターネットもない時代、決して裕福でもなかった中で懸命に志向したていねいな暮らし。それを描く『とと姉ちゃん』が今、ツイッター10年の節目の年に、高視聴率をとり、ツイッターでも感動の声が行き交っている。
昨今、豊かに暮らすことをコンセプトにしたライフスタイル誌が人気で、モデルの亜希(47才)や滝沢眞規子(37才)、梨花(42才)ら女性が憧れるカリスマたちは、以前のように、“いつまでも若くてキレイ”なだけの女性ではなくなった。
家族で朝食を囲み、日々のお弁当を楽しんで作る。適度に体を動かし、肌なじみのいい服をさらりと着て、季節の花をリビングに飾る。SNSを頻繁に更新している彼女たちだが、その生活はいずれも、かつての大橋さんのように、モノの豊かさよりも心の豊かさを重視しているように見えるのは決して偶然ではない。
「1970年代に突入する直前、大橋さんは時代のせわしなさになんとなく違和感があって、ちょっと足を止めて暮らしを見つめ直してみようということを強く思われたのではないかと感じています。
時代のスピードと、彼女の実年齢に合うものがあって、それを今、違う年代の私が読んでもとても共感する。もっと若い世代の人も共感しています。将来にときめく10代にとっても、容姿も衰え老後が不安な50代にとっても、どんな一日だって、たった一度しかない。急かされる毎日だからこそ、日々の食事、生活を見直すことが必要でしょう。だからみなさん、ていねいな暮らしに憧れるのではないでしょうか」(岸本さん)
※女性セブン2016年5月26日号