NHKの連続テレビ小説『とと姉ちゃん』が好調だ。4月のスタート以来、全話で平均視聴率20%超えを記録している(5月16日現在)。
その人気ぶりは、出演者たちも肌で感じている。高畑充希(24才)演じるヒロイン小橋常子ら家族が住み込みで働く仕出し屋「森田屋」の女将・まつを演じる女優の秋野暢子(59才)は、こう話す。
「どこに行っても“まつさん!”と声をかけられます。エレベーターで若いお嬢さんから、“まつさん、大好きです”と言われたときは本当にうれしくて、みなさん見ていらっしゃるんだなと思いました」
秋野はすでに自身のシーンを撮り終えクランクアップしているが、高畑や木村、それから森田屋のメンバーらとの交流は続いている。
「せっかくだからLINEのグループを作ろうということになって、みんなと連絡先を交換して、森田屋の看板をアイコンにして“森田屋LINE”を作りました。森田屋はいつもうるさいぐらい明るい家族ですが、メンバーもみんなとっても仲良しです。役柄で呼び合っていて、私が、“常ちゃん、ご飯食べに行く?”と言ったら、常ちゃんが“行きた~い!”なんて具合に、時々集まってご飯を食べに行くんですが、ワイワイと賑やかにやってますよ」
森田屋の食卓はいつも賑やかだ。まつを中心に、息子・宗吉(ピエール瀧)や妻・照代(平岩紙)たち。そこにすっかり家族のようになった常子ら4人も加わる。
考えれば『とと姉ちゃん』では、その形や人数は変われど、いつも食卓を家族が囲んでいる。実は家族が朝ドラで描かれるのは久しぶりだ。最近の朝ドラでは前作『あさが来た』や『ごちそうさん』(2013年)『マッサン』(2014年)など、夫婦の物語を中心に描かれるものが多かった。
そうした中で家族を描くことは「チャレンジでした」と『とと姉ちゃん』制作統括の、チーフ・プロデューサー・落合将さんが言う。
「女性が嫁いだ先、いわば外の世界に入って奮闘していく夫婦モノは共感を得やすいですが、家族モノというと、親やきょうだいに守られた存在なので共感しにくい印象を持つ人もいると思うんです。でも今回、お蔭様でたくさんの人に見てもらえているのは、父を失い欠落感を抱えた家族の物語だからかもしれません。親子4人が結束して、困難を乗り越えていくから応援してもらえるんでしょう」
そう、『とと姉ちゃん』の家族を私たちは応援している。温かくて、まぶしいほどのあの家族を。それは、家族崩壊が叫ばれ、ギスギスした人間関係に悩み、『家族という病』(下重暁子・幻冬舎新書)がベストセラーになっている現代の社会とは隔世の感もある。
※女性セブン2016年6月2日号