老後破産をテーマにした論考は、シニア層の「収入」に注目したものが多い。しかし、“収入がある程度確保できるから安心”かといえば、そんなことはない。
金融広報中央委員会の全国調査によれば、貯蓄ゼロの世帯は全体のおよそ3割で、意外なことに高年収でも貯蓄のない世帯が多い。同調査では、年収750万~1000万円の世帯の11.2%、年収1000万~1200万円の世帯の13.5%、年収1200万円以上でも11.8%が貯蓄ゼロだった。
そこで、家計再生コンサルタント・横山光昭氏は、計画的に支出を減らしていく「生活のダウンサイジング」の重要性を説く。着実に家計を見直したケースとして、こんな事例を挙げる。
「55歳のタイミングで保険を見直した方です。若い頃に薦められるままに加入して、気が付けば月々の保険料支払いが10万円を超えていた。『給料天引きにしていたので、自分がどのくらい支払っているのかよく分かっていなかった』というのです。
年収800万円程度あったので、気にしていなかったわけですが、早期退職して再就職を考え始めたタイミングで問題に気付くことができた。その後、再就職で年収は減りましたが保険を必要最小限のものに変えていたのでそこまで困らずに済みました。
保険は人生のステージによって必要な補償内容が変わってくる。特に55歳前後はちょうど子供が独立していくタイミングに重なります。死亡保険の補償額は減らせる。少額でも貯蓄があれば“葬儀代を保険で賄う”必要すらありません。高齢になるほど保険に入り直すのは難しくなるので、面倒がらずに定年前に整理しておくのが望ましい」
また横山氏によれば、支出に頓着しない家庭では「携帯料金のプラン設定」も最適化されていないことが多いといい、「現役時代とは違う使い方になるので、量販店の『携帯コンシェルジュ』などのサービスを使うといい」(同前)とする。
※週刊ポスト2016年5月27日号