ビジネス

星野リゾート 強さの秘密は「現場主義」か

星のや軽井沢は「谷の集落」がコンセプトのひとつ

 2016年最も注目されるホテルトピックの一つに「星のや東京」の開業がある。運営は全国各地に宿泊施設を展開する「星野リゾート」である。

 予約の取りにくい宿としてリピーターも多い全国各地にある星野ブランド。人気の秘密を探るべく、ホテル評論家の瀧澤信秋氏が本拠地のある長野県軽井沢町に向かった。

 * * *
 星野リゾートは、星のや東京も含めた最上級ブランドの「星のや」、温泉ブランドの「界」をはじめ、リゾートホテルブランドである「リゾナーレ」など、国内各地への多彩な展開で知られる。形態は所有/運営受託など様々であるが、いずれの施設も業績は好調で、旧態型施設の再生にも定評がある。

 筆者は星のやの本拠地である「軽井沢エリア」に馴染み深い。星のや軽井沢をはじめとした軽井沢エリアの施設が建設されているころ、近隣に定住していたこともあり思い入れがある。とはいえ、その後の星野リゾートがみせた多角的な施設展開については、多くのメディアに注目され情報拡散してきたことから、評論家としてはニュートラルに距離を保ち特段取り上げることはなかった。

 ところが、今回の「星のや東京」開業トピックはさすがに無視できず、記者発表会に参加した。結果、果たして星野リゾートは、宿泊料金に見合ったハードやサービスを提供できているのかという思いを抱くことになった。多くのメディアから情報発信されているような、星野リゾートのポジティブな情報と実態の乖離は無いのか──ということである。

 かような経緯で、星野リゾートの原点である軽井沢エリアの「星のや軽井沢」「ホテルブレストンコート」へ取材に出向いた。

 過去様々なホテルを取材してきたが、カリスマのいる組織は、肥大化する中でカリスマ性が末端の綻びをオブラートに包む。ゲストに非日常の時間・空間を提供するホテルは特にイメージを重視するだけになおさらだ。

 一般人がイメージする星野リゾートといえば、星野佳路代表の存在感だろう。星野リゾート=星野代表という印象を持つ人は多い。自身も長年星野代表のメディア露出を見てきて、星野リゾートには末端にまで“星野代表イズム”が浸透、トップダウンの完璧なマニュアルが存在しているのだろうと推測していた。

 ところが、実際出向いて意外だったのは、あくまでも「現場主義」を貫いていることだった。

 例えば軽井沢であれば、自然の中に存在する日本の原風景に身を置くことが一貫して意識されている。よく考えられた施設のコンセプトや、吟味されたグルメのクオリティの根底にあるのは「信州へのリスペクト」だ。軽井沢に限らず各施設がそれぞれの土地に根づく風習・慣習、文化を尊重しているという。

 それらは「土着のホスピタリティ」とも評せるだろう。風土を意識しゲストの体験に落とし込むことを星野リゾートは重視するが、かような組織において権限委譲は当然なのかもしれない。

関連記事

トピックス

タイと国境を接し、特殊詐欺の拠点があるとされるカンボジア北西部ポイペト。カンボジア、ミャンマー、タイ国境地帯に特殊詐欺の拠点が複数、あるとみられている(時事通信フォト)
《カンボジアで拘束》特殊詐欺Gの首謀者「関東連合元メンバー」が実質オーナーを務めていた日本食レストランの実態「詐欺Gのスタッフ向けの弁当販売で経営…」の証言
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《ベイビーが誕生した大谷翔平・真美子さんの“癒しの場所”が…》ハワイの25億円リゾート別荘が早くも“観光地化”する危機
NEWSポストセブン
まさか自分が特殊詐欺電話に騙されることになるとは(イメージ)
《劇場型の特殊詐欺で深刻な風評被害》実在の団体名を騙り「逮捕を50万円で救済」する手口 団体は「勝手に詐欺に名前を使われて」解散に追い込まれる
NEWSポストセブン
戸郷翔征の不調の原因は?(時事通信フォト)
巨人・戸郷翔征がまさかの二軍落ち、大乱調の原因はどこにあるのか?「大瀬良式カットボール習得」「投球テンポの変化」の影響を指摘する声も
週刊ポスト
公然わいせつで摘発された大阪のストリップ「東洋ショー劇場」が営業再開(右・Instagramより)
《大阪万博・浄化作戦の裏で…》摘発されたストリップ「天満東洋ショー劇場」が“はいてないように見えるパンツ”で対策 地元は「ストリップは芸術。『劇場を守る会』結成」
NEWSポストセブン
なんだかんだ言って「透明感」がある女優たち
沢尻エリカ、安達祐実、鈴木保奈美、そして広末涼子…いろいろなことがあっても、なんだかんだ言って「透明感」がある女優たち
女性セブン
同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン
過去の大谷翔平のバッティングデータを分析(時事通信フォト)
《ホームランは出ているけど…》大谷翔平のバッティングデータから浮かび上がる不安要素 「打球速度の減速」は“長尺バット”の影響か
週刊ポスト
電動キックボードの違反を取り締まる警察官(時事通信フォト)
《電動キックボード普及でルール違反が横行》都内の路線バス運転手が”加害者となる恐怖”を告白「渋滞をすり抜け、”バスに当て逃げ”なんて日常的に起きている」
NEWSポストセブン
16日の早朝に処分保留で釈放された広末涼子
《逮捕に感謝の声も出る》広末涼子は看護師に“蹴り”などの暴力 いま医療現場で増えている「ペイハラ」の深刻実態「酒飲んで大暴れ」「治療費踏み倒し」も
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
《結婚願望ナシの中村七之助がゴールイン》ナンバーワン元芸妓との入籍を決断した背景に“実母の終活”
NEWSポストセブン
松永拓也さん、真菜さん、莉子ちゃん。家族3人が笑顔で過ごしていた日々は戻らない。
【七回忌インタビュー】池袋暴走事故遺族・松永拓也さん。「3人で住んでいた部屋を改装し一歩ずつ」事故から6年経った現在地
NEWSポストセブン