東日本大震災から5年が過ぎたが、巨大地震が引き金となって、およそ5年以内に必ず起こるといわれている大噴火が危惧されている。そしてその兆候が、ついに現われた。
5月6日、新潟県と長野県の県境にそびえ立つ新潟焼山(やけやま)で水蒸気噴火による降灰が確認され、山頂から半径1キロメートル以内が立ち入り禁止区域に設定された。これは3・11以降、東日本一帯で火山活動が活発化している証左であり、今後、さらに大きな噴火が連続して起きる可能性がある。
火山の連続噴火による被害は軽視できない。東日本で活動が盛んになっている活火山は複数観測されており、噴火の懸念が強まっている。多くは都市部から離れ、麓などに大きな人口密集エリアもないため、噴火による人的被害は少ないと見られているが楽観は禁物だ。防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実氏が語る。
「噴火による火山性ガスの発生で近くに居合わせた観光客が危険に晒される可能性は高い。また雪山が噴火すると、噴出物と大量の雪が溶けた水が混じり合って泥流が発生します。融雪泥流の流れる速度は時速60キロ以上とも言われ、通常の土石流より格段にスピードが速くなるため被害は大きくなるでしょう」
さらに厄介なのが火山灰だ。仮に首都圏に近い浅間山が大噴火すれば、大量の火山灰が東京に降り注ぐことになる。地震の研究者として知られる立命館大学・歴史都市防災研究所教授の高橋学氏が解説する。
「火山灰は、ガラスのような粒子のため、電線にわずかに積もるだけでショートしたり電線が切れてしまう。道路に5センチ降り積もるとタイヤがスリップして車が走れなくなり、鉄道も同じく運休を余儀なくされます。航空機もエンジントラブルを起こし飛行不可能になる。降り注ぐ火山灰の量によっては首都圏の交通網は完全に麻痺することになるのです。
また粒子の細かい火山灰はわずかな隙間からでも屋内に侵入するため、仮にパソコン内に入り込めばインターネットも使えない。首都圏の通信・交通インフラが全てストップする異常事態は未曽有の混乱をもたらしかねない」
※週刊ポスト2016年5月27日号