出版業界はいま空前の「角栄本」ブームに沸いている──。昨年以降、田中角栄に関連する本やムックが相次いで出版された。
ブームのきっかけとなったのが、〈できることはやる。できないことはやらない。しかし、すべての責任はこのワシが負う。以上!〉などの名台詞を収録した『田中角栄100の言葉 日本人に贈る人生と仕事の心得』(宝島社)だ。
さらに若手議員時代は「反田中」の急先鋒とされた作家・石原慎太郎氏(83)が一人称で角栄を描いた『天才』(幻冬舎)もベストセラーになり、それぞれ50万部を突破するという脅異の売り上げを記録している。
このブームの波に“相乗り”しようとしている男がいるという。角栄と神楽坂の芸者の間に生まれた長男・田中京氏(64)だ。京氏は幼い頃、角栄に後継者として期待されるなどかわいがられたが、正妻の子である長女・真紀子氏に遠ざけられ、表舞台に出ることはなかった。その京氏が政界進出に乗り気になっている、ともっぱらの噂なのだ。政界に詳しいベテランジャーナリストは話す。
「実は京氏は7月の参院選出馬を狙っていて、今年に入ってから角栄氏の顔が利く中国絡みの集まりに頻繁に顔を出すなど活発に動いている。自民党の公認を得るべく、自民党の大物議員にも会いに行っている」
ただし、「東京育ちの彼は角さんのお膝元の新潟に縁がなく、地盤がない。経営していた飲食店が倒産するなど、金銭トラブルが過去に報じられたこともあり、厳しいでしょう」(同前)と甘くない。京氏に出馬の意向について聞いた。
「オヤジのあとを継いで日中友好のために活動はしていますが、出馬は考えていません。僕は政治があまり好きじゃないんですよ。が出ると周囲は単純に期待してしまうかもしれませんがね」
と政界進出については否定しつつも、「実はオヤジについて書いた本を6月か7月に出す予定です」とさりげなく出馬ではなく出版を“事前運動”する京氏。
妾の子にも深い愛情を注いだ角栄氏の“遺産”は没後23年経ったいまも効果絶大のようだ。
※週刊ポスト2016年6月3日号