7月と噂されている参議院選挙では、18歳選挙権が初めて行使される選挙となる。18歳でも選挙についてよくわかるようにと、メディアや高校で様々な啓発・教育が行なわれているが、評論家の呉智英氏は無意味なものが多いと、その空疎さを指摘している。以下、呉氏が解説する。
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改正公選法が6月から施行され、18歳選挙権が実現する。新聞には啓発記事が掲載され、高校では模擬投票も行なわれている。しかし、これが啓発、教育だろうか。
朝日新聞は、昨年末以来、AKB48のメンバー3人を起用し、憲法学者・木村草太、ジャーナリスト・津田大介を交互に講師として、政治の仕組を学ぶと称する企画を随時連載している。AKBを使うのは、ソフトに、ポップに、ということらしいが、本質を外していたら何の意味もない。
2月12日付は「国政選挙、AKB総選挙とどう違う?」。問われるまでもなく、誰でも分かる。AKB総選挙で選ばれるのは、舞台でセンター位置に立つ権利者である。国政選挙で選ばれるのは立法権者(国会議員)であり、その中から行政権の長(総理大臣)が選ばれる。要するに統治権力の執行者を選ぶのである。AKBのセンターなんて何の権力執行もできない。国政選挙とは全然違う。
だが、共通点もある。AKBの実質的な統治権力者はプロダクションである。センター権者を気に入らなければ潰してしまえばいいし、AKBを解散させることさえできる。国政の場合も同じで、選挙なんて無関係に統治権力を代えてしまうことができる。クーデタ、革命、そして侵略(被侵略)である。憲法学や政治学で言う「憲法制定権力」の交代である。
一見難しそうなこの言葉も、AKBというシステムを譬えにすれば、非常によく分かるだろう。そして、ここが憲法論の要なのである。
共通点はまだある。AKB総選挙も国政選挙も、しょせん人気投票だし、金がものを言う、ということである。国民なんてその程度のものだし、民意なんてその程度のものであり、そうであれば、今我々が当然のことだと思っている普通選挙制度(1925年成立)も疑ってみる必要がある。だって、日本の軍国主義化、アジア侵略、治安維持法とその強化(最高刑に死刑を含める)は、全部普通選挙以後のことではないか。
朝日新聞の啓発記事以上にくだらないのが各地の高校で行なわれている模擬投票である。