「定価を高めにしたのに14万部がたちまち完売。電子版もいつもの10倍以上売れました。『おそ松さん』の特集が理由だと考えています」──そう話すのは、書籍情報誌『ダ・ヴィンチ』(KADOKAWA)の担当編集者だ。
かつて『週刊少年サンデー』(小学館)で連載された赤塚不二夫の名作ギャグ漫画『おそ松くん』が大人になった──という設定のテレビアニメ『おそ松さん』(テレビ東京系)が、大ブームとなっている。ブームを牽引しているのは『おそ松くん』を知らない若い世代の女性たちだ。
ブルーレイとDVDが大ヒット、1000種類以上ものグッズが登場。関連イベントも相次いで行なわれるなど、3月の放送終了後も人気が続き、その勢いがついに出版界にも飛び火したのである。
『ダ・ヴィンチ』以外にも、『週刊朝日』『an・an』『週刊女性』など普段はアニメと無縁の雑誌が『おそ松さん』を特集し、軒並み好調な売れ行きだったという。
「大人になったおそ松をはじめとする松野兄弟が、それぞれギャンブル好き、ナルシスト、真面目など個性的に描かれていて、その掛け合いが絶妙で面白い」(アニメジャーナリストの渡辺由美子氏)というのだが、これほどの爆発的人気には別の理由もあるようだ。
「女性のアニメファンなら名前を聞いただけで卒倒してしまうくらい豪華な人気男性声優たちがキャスティングされているんです」(同前)
おそ松役の櫻井孝宏、カラ松役の中村悠一、チョロ松役の神谷浩史、一松役の福山潤、十四松役の小野大輔、トド松役の入野自由……門外漢にはピンと来ないが、いずれも女性ファンを虜にするイケメン声優だ。
「小野D(小野大輔の愛称)が声優をしているアニメキャラが表紙に出ているのなら、どんな雑誌でも全部買っちゃいます」(24歳・OL)というように、彼女たちにとっては「コンプリート買い」が基本なのである。
前出の『ダ・ヴィンチ』の担当者も語る。
「通常の読者層は20~40代なのにあの号だけは10~20代の女性によく売れた。紙の雑誌を購入できなかった普段の読者が仕方なく電子版を購入したようです」
イケメン声優パワー、恐るべし。
※週刊ポスト2016年6月3日号