多くの人が「あり得ない」と思っていても、衆参ダブル選挙があるのではという雰囲気が消えない。そして、安倍晋三首相が同日選に前のめりになると与党内と官邸がガタつき始めることは避けられない。
政権の大黒柱である菅義偉・官房長官が「解散・総選挙に大反対」とみられているからだ。
菅氏はこれまで同日選について、「どうかなと思うが、(衆院解散は)首相の専権事項だ。首相が『やる』と言えばやるということだ」(4月11日。自民党のインターネット番組)と、消極的ながらも首相の判断に従うような言い方をしてきた。あえて「どうかな」と前置きする理由は、菅氏は創価学会首脳部と太いパイプを持つことで知られ、安倍政権の学会窓口の役割を果たしているからだ。
自民党にとって公明党・創価学会との選挙協力はダブル選勝利の絶対条件だが、山口那津男・公明党代表は「政治や行政の空白を作るべきでない」とダブル選挙に反対の立場だ。
「公明党・創価学会は同日選はなくなったと判断し、すでに参院選シングルの前提で選挙準備に動き出している。いまさらダブルとなっても対応できない。菅官房長官には学会側からそうした選挙事情が伝えられ、“絶対ダブルはありませんよ”と釘を刺されている」(菅氏に近い議員)
現在、与党内では安倍首相と公明党がダブル選挙をめぐる神経戦の真っ最中だ。首相は消費10%への増税再延期と同日選をセットで打ち出すとみられているが、公明党内には「増税再延期する場合、ダブル選挙はしないという前提が必要だ」という声が強い。そこで山口代表は「増税再延期は首相や担当相の判断だけで決められるものではない」と党首会談を要求した。
会談は18日に行なわれたが、その場では消費税延期問題は話題に上らなかった。
「総理がサミットについて話すばかりで、延期問題を上手に避けた。肩透かしを食った山口代表は不満そうだった」(官邸筋)
※週刊ポスト2016年6月3日号