中国社会において、かつて高度成長時の日本がそうであったように、「出稼ぎ労働」は珍しいものではない。だが、それが少なからぬ問題を誘発しているのも事実である。拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰が指摘する。
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中国では学校でのいじめ問題が深刻化している。国内で運営される動画サイトには、いま中学生だけでなく小学生による同級生への殴る蹴るの暴行のシーンが溢れている。
酷い動画では、女児数名が笑いながら同じ年齢くらいの女子児童に対し寄って集って暴行を加え、それを嬉しそうに動画撮影している様子までが投稿されていて──しかも投稿数が驚くほど多い──この問題の根深さを感じることができる。
なかでも農村地区のいじめが深刻で、多くの場合その被害者は、両親ともに出稼ぎで地元を離れ子供のそばにいられないというケースだという。何とも切ない現実があるというのだ。
そうした問題が広がるなか、中国社会を震撼させるニュースが江西省から全国に発せられた。
5月13日、上海の澎湃新聞ネットが配信した記事のタイトルは、〈出稼ぎ農民工の12歳娘が両親の留守中に性病を発症 通っている学校で繰り返し性的暴行を受けた疑いか〉である。
現場となったのは南昌市南昌県。すでに現地の南昌県公安局が調査に当たり、容疑者は特定されているという。容疑がかけられているのは学校の施設建設のために長期間学校に泊まり込んでいた58歳の男だという。
子供のためにも都会に出稼ぎに行き、長期間家を空けざるを得ない両親にとっては、切ない話である。