嵐の大野智(35才)主演で好調のドラマ『世界一難しい恋』(日本テレビ系)。このドラマで、ちょっと気難しくて不器用なホテルチェーン社長・鮫島を演じる大野に注目が集まっている。ハマり役となった大野の演技について、コラムニストのペリー荻野さんが解説する。
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そんなわけでじわじわと恋愛が進行しつつある『世界一難しい恋』。第六話折り返しの時点で、やっと電話で会話できる間柄って。じわじわにもほどがある。中学生か!小学生か!などと言いつつ、『あまちゃん』の杉本哲太、『まれ』の清水富美加、『マッサン』の小池栄子、『あさが来た』の波瑠と三宅弘城とロイヤルストレートフラシュのごとく揃った朝ドラの人気者たちがドラマを盛り上げていることもあって、ハマっている人も多いと思う。
主人公の鮫島零治(大野智)は、「世界一のホテルを作る」が口癖の青年社長。とにかくビジネスには厳しく、ミスした従業員を即刻クビにするような独裁的経営者。やり手の大金持ちで、客を満足させる能力は最高だが、恋愛能力はゼロという男である。その鮫島が、パリの五つ星ホテルで勤めた経験もある中途入社の社員柴山美咲(波瑠)に一目ぼれして、おっかなびっくり接近、社内恋愛を秘密にしながらのドタバタが展開するラブコメだ。おっかなびっくり。久しぶりに使った言葉だが、鮫島にはぴったりなだと思う。
面白いのが、鮫島の言語感覚。なにしろ、美咲に告白しようと考えついた言葉が「俺はキノコが大好きだ。オマエのこともな」。
キノコと女の子を並べたうえ、キノコのほうが先にくる。キノコの方が勝ってる感じがするところがいい。
そして、なんとか相手にイエスの答えをもらった瞬間の返答が「交際していただけるということか」。
あれ?社長、これって、ていねいなのかていねいじゃないのかわかんないんですけど? 美咲がデートの待ち合わせ時間をメールで知らせてくると、うっかり「うむ。」と返信してしまいそうになる鮫島。せっかくうまくいきかけても「当然だ。最初から俺の言う通りにしとけばいいんだ」とか「ご飯をごちそうしてやったのに」など、美咲に対して、つい俺様発言が出てしまう。その仲直りのきっかけが「おやすみなさい」を反対に読んで架空の作家「いさなみすやお」とその妻の物語を美咲と語り合うという発想には、びっくりさせられた。これは脚本のなせる業だが、こんな言語がしっくりくるところに俳優大野智の味がある。そこで思い出すのは、大野智の当たり役『怪物くん』だ。
怪物ランドのわがまま王子をアイドルの大野智が演じるというのは、当初、びっくりだったが、始まってみれば実にぴったり。たいていぶすっとした顔で、他者には厳しく、自分には甘々。言動の基本は命令形。相手の気持ちに後から気づいて、それでもなかなか素直になれなくて、やっと一言本音をポロリとつぶやく怪物くん。これは鮫島ととてもよく似ている。
『世界一難しい恋』が始まったとき、『怪物くん』『死神くん』から久しぶりの人間役、と言われたものだが、人間だろうと人間以外だろうと「ぶすっとした王子様」は、大野智のりっぱな芸風といってもいい。
それにしても、ふと気になったのは、タイトルで「世界一難しい」と銘打っているが、鮫島と美咲の恋愛そのものは、そんなに難しい感じでもないこと。7話では、部屋にお泊りしながらも進展がないという意外な流れだが、「俺が世界一難しいって言ってるんだから、難しいんだよ!」。鮫島の声が聞こえるようではある。