中国のネット上では、中国共産党に批判的な言葉はNGワードとされ、書き込めばたちまち削除、検索することもできない。いったい中国では何が起きているのか。中国出身の漫画家・孫向文氏が解説する。
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いま中国では「新ネット規制法案」が議論されている。これまでは、中国国家主席や共産党についてネガティブな情報が掲載され得るサイトを「ブラックリスト」として遮断していた。
グーグルやフェイスブック、ツイッターにはアクセスできない。「新ネット規制法案」では、中国当局が許可したサイトのみが中国国内から閲覧可能になり、それ以外の海外サイトはすべて遮断される「ホワイトリスト」方式になるという。
当局が検閲してNGワードを削除する、これまでの「モグラ叩き」方式では手に負えなくなったことの証左だろう。
習近平は毛沢東時代と同じような厳格な情報統制を敷こうとしているが、いまは当時と違いネットがある。
瞬時に多くの人が情報を共有できることや、どんなに規制しても抜け道があることを「趙王回車」の習氏は知らないのだろう。だから「ネットは規制してしまえ」という論法になるのだ。
私はネットのおかげで日本に来るきっかけを掴み、自分の描きたい漫画を描けるようになった。もし新ネット規制が実現すれば、中国は「ネット鎖国」の状態になる。
才能のある人が海外に行って活躍するチャンスが減るばかりでなく、国内で海外と仕事を共にする機会も激減する。それでもネット規制を強めるのは、国民の将来を犠牲にしてでも習近平政権を死守しなければならない、という身勝手な理屈によるものだ。
●そん・こうぶん/中国浙江省杭州市出身の32歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。2013年来日。現在、月刊漫画誌『本当にあった愉快な話』(竹書房刊)にて「日本に潜む!! 中国の危ない話」を連載中。著書に『中国のヤバい正体』、『中国のもっとヤバい正体』(いずれも大洋図書刊)などがある。
※SAPIO2016年6月号