坂本九が歌い出せば、永六輔が「なんだその歌い方は!」と強烈なダメ出し。周りに女性たちをはべらせた森繁久彌が向田邦子に「一回、どう?」と口説く。生放送中に三木のり平がセリフを忘れると黒柳徹子(82才)が大慌てでアドリブ──。
50年前のテレビがそのまま現代によみがえったかのような錯覚に陥る。団塊世代はもちろん、当時を知らない30代、40代をも釘付けにしているのが『トットてれび』(NHK)だ。
「岸本加世子さん(55才)演じる沢村貞子さんがなつかしくて…。黒柳さんとの母娘のような関係が垣間見えて当時にタイムスリップしたような気持ちになりました」(66才・主婦)
「こんなドラマ見たことない! 当時はドラマも全部生放送だったなんて信じられない。『上を向いて歩こう』とか『スーダラ節』とか知ってる曲がたくさん出てきて、ミュージカルみたい」(32才・会社員女性)
丁寧言葉なのに早口、よく通る高い声、ちょっとお節介、そして玉ねぎ頭。日本初のテレビタレントとして80才を超えてなお第一線で活躍する黒柳を演じているのが満島ひかり(30才)だ。“まるで本人そのもの”とその演技に注目が集まっているが、実は“三度目の正直”だった。
「これまで2回オファーがありましたが、いずれも断ったそうです。監督から『ただの再現ドラマにはしたくない』と熱心に口説かれ、3度目にして決意したと言います。最近、離婚や新たな恋が話題になりましたが、それもかすむほどの演技力はさすがです」(テレビ局関係者)
ドラマの高評価は満島の演技だけではない。森繁久彌を吉田鋼太郎(57才)、坂本九を錦戸亮(31才)、向田邦子をミムラ(31才)、渥美清を中村獅童(43才)など、豪華すぎる顔ぶれだ。
「森繁さんて、あんなに“色男”だったんですね(笑い)。吉田さんが見事にハマってます。渥美清さんも、寅さんのイメージしかなかったけど駆け出しの頃をリアルに見るようで不思議な気持ちです」(47才・主婦)
ナレーションを小泉今日子(50才)が務め、音楽や演出などスタッフも朝ドラ『あまちゃん』の布陣が固める同ドラマは“テレビ史”“昭和史”としてドキュメンタリー性も高いといわれる。
「現存する当時の映像もふんだんに使われているうえ、再現も号泣ものの精度。小さな頃の記憶が一気によみがえってくる。東京五輪の1964年にカラーテレビが家に届いてはしゃいだことを昨日のことのように思い返しました。『三丁目の夕日』もそうですけど、あの時代の勢いを感じて元気をもらっています」(65才・主婦)
ドラマには黒柳本人も“100才の徹子”役で登場する。『トットてれび』は、なんだかなつかしくて、新しい。
※女性セブン2016年6月9・16日号