日本国民の3人に1人を蝕んでいると言われる「高血圧」、それは、“血圧が持続的に上昇した状態”のことだ。血中塩分濃度が上がると、それを正常値に保とうと血液量が増えるため、血液を全身に送り出すポンプである心臓に大きな負担がかかってしまう。塩分摂取量が多い日本人にとって、高血圧はかかりやすい国民病といえるだろう。
ところが昨年夏、英医学誌『ランセット』に発表された米ワシントン大学健康指標評価研究所の研究論文「世界疾病負担調査」により、世界に広がる高血圧リスクが浮き彫りとなった。
2013年に3080万人を死に至らしめた79の死因リスクを分析した結果、“世界一多い死亡の原因は高血圧”であることがわかったのだ。高血圧をめぐる世界の実情を、血圧の専門医である渡辺尚彦さんはこう説明する。
「現在の日本での死因1位はがんですが、そもそも脳卒中が日本人の死因1位だった時代が長く、現在も心疾患や脳疾患などの高血圧系疾患は、日本人の死因の約4分の1を占めます。一方、欧米では心筋梗塞が多く、どちらも高血圧との因果関係が深い病気。今や世界のどこであっても高血圧は注意したい病気であることは明白です」(渡辺さん)
高血圧がもたらす病気にはさまざまなものがある。たとえば脳で起きた場合は、血管が破れる脳出血や、血管がつまる脳梗塞など。また心臓で起きた場合は、心不全や狭心症、血管がつまる心筋梗塞の要因にもなる。
こうした合併症を引き起こす前の、高血圧それ自体は自覚症状がなく、気がつかないうちに進行することからも、注意が必要だ。
また、「日本人は寿命と“健康寿命”の差が世界一大きい点に注意すべき」と指摘するのは、循環器を専門とする医師の久代登志男さん。
「日本は平均寿命も、心身ともに自立して健康的に生活できる期間である健康寿命も、ともに世界トップです。しかし平均寿命ほどに健康寿命が延びないので、両者のギャップが男性は9.13年、女性は12.68年と長いのが実情です。高血圧で脳卒中や認知症、心不全になると、健康寿命が奪われ、支援が必要な時間が長くなってしまうのです」(久代さん)
苦しんで死を迎えず、元気な老後を迎えるためにも、血圧管理は不可欠といえる。
※女性セブン2016年6月9・16日号