著名人が1か月間で半生を振り返る日経新聞の人気連載「私の履歴書」。5月1日から始まったのは将棋の中原誠・名誉王座(68・十六世名人)の連載だ。
米長邦雄、加藤一二三、谷川浩司など名棋士たちとの交流や、1979年の名人戦で見せた将棋史に残る絶妙手「5七銀」など、将棋ファンにはたまらない逸話が盛り沢山だが、誰もが気になったのは、元女流棋士・林葉直子(48)とのドロ沼不倫騒動を「書くか、書かないか」だった。
12歳でプロ棋士になった林葉は「将棋界の聖子ちゃん」として脚光を浴びる一方、1994年に失踪騒動を起こし、翌年に将棋連盟を追われるように引退。ヘアヌード写真集を出版した。そんな林葉が1998年にマスコミに告白したのが、中原氏との不倫関係だった。
中原氏との数年にわたる交際がもつれた林葉が、すべてを世間に公表することを決意。「もしもし、これから直子邸に突入しまーす」という中原氏の肉声を録音した留守番電話のテープがワイドショーで流され、世間は騒然となった。もちろん、中原氏も芸能マスコミに追いかけ回される事態に。
最終回まで残り5回となった5月26日現在、林葉の名前は一切出てきていなかった。まさか、このまま“抹殺”されてしまうのか──。
同日、記者は中原氏の自宅を訪れた。庭仕事をしていた夫人は、「(夫は)名人戦の解説の仕事で棋譜を読んでいて席を外せない」としつつ、こう話した。
「明日の回でほんの少し触れるだけです。触れないといけないことですし……すべて終わったことなので、今さら深く書くつもりはないですよ。自分(中原氏)の対応がまずくて大騒ぎになったけれど、今は関係ないし、関心もないです」
その言葉の通り、翌27日の紙面で中原氏は、〈ある女流棋士との関係〉について触れたが、〈プライベートなことで将棋連盟の公務に支障をきたすのは本意ではなかった。世間を騒がせたことは、私の不徳のいたすところだった〉と言及するにとどめた。
どうやら、人生最大の“悪手”を引きずってはいないようだ。
なお、林葉は騒動後、豊胸手術、飲食店経営の失敗で自己破産と激動の人生を経て、2014年には自伝出版でテレビに出演し、その“激やせ”姿が話題となった。
現在は占い師として地元の福岡で活動している林葉に、自伝の出版元を通じて連絡を試みたが、締め切りまでに応答はなかった。
※週刊ポスト2016年6月10日号