〈「女性は2人以上産むことが大切」大阪の中学校長 全校集会で〉
こんな見出しの記事が新聞各紙に躍ったのは3月中旬。「不適切な発言」であるとの批判が評論家などから相次ぎ、波紋を呼んだ。一方で、「間違った発言ではない」とする声も少なからずあった。その真意はどこにあったのか。3月末で職を退いた寺井寿男・前校長を直撃した。
──「女性に出産を強いるような価値観の押しつけだ」といった批判もあった。病気などで子供を持つことができない人に対し、配慮に欠くとの指摘もある。
「学校のホームページで公表した発言要旨(記事末尾参照。現在はホームページからは削除)を見ていただければ分かるように、病気などで子供に恵まれない人の苦しみはもちろん認識しています。人生の選択として結婚しない人も含めて、子供を持てない人、持たない人も、里親になって子供を育てることはできます。
また、決して女性が仕事することを軽視しているわけではありません。『子育てが終わった女性は無料で国立大学の望む学部に能力に応じて入学し、卒業できる権利を与えたらよい』という意見を紹介した通り、女性が学び、仕事に就くことは大切なことです。その上で、子育てはそれほど価値のあることだということを伝えたかったのです。
2000年には現役世代約4人で高齢者1人を支えていましたが、まもなく1.8人で高齢者1人を支えることになる。すると、年金も減らさなきゃならない。介護士の数も少なくなります。それを避け、日本がなくならないためには子供を育てるしかないのです」
──中学生に対する発言としてふさわしいと考えるか。
「童謡の赤とんぼに『十五で姐やは嫁に行き』という歌詞があります。昔は数え年ですから13~14歳でしょう。中学生の年齢です。その歌が発表されたのが約100年前です。
もちろん現代は違うし、『今すぐ産むべき』なんて言ってはいません。ちゃんと産める状態になってから産むべきとは教えている。そして子育てが煩わしいもの、損なことという考えがはびこっている現状が変わってほしいと思っています」
〈大阪市教委は発言を受けて寺井氏の処分を検討したが、服務違反はなく懲戒にはあたらないと判断。寺井氏は、世間を騒がせた責任を取るとして、この4月からの再任用を辞退し、校長から退いた。〉
「発言内容に対して間違っているとは思いません。ただし私は、最後まで生徒の立場に立って考えています。だから、このような騒ぎを招いたのは私が原因なので、それに対して責任を取るということです。
少し恥ずかしいんですけれどね……(といって、カバンから手紙を出す)これ、私の宝物です。
〈大阪市立○○中学の5期生 ○○恵子です。(中略)いろいろ面倒を見てもらった事、忘れていません〉
〈(先生が)今まで受け持った生徒の一人一人がその優しさに助けられて成長してきたのだと思います。寺井先生、いつも応援しています〉
〈私は現在結婚して××恵子になり、○○区で小さい子供達の英語教室をしています。すっかりオバサンになりました(笑)〉
教師をしていてよかったですわ。これがあるから教師をやってきたんです」