昨年夏、安保法制を「違憲」だとして廃案を訴え、注目を集めた憲法学者の小林節・慶應大学名誉教授が、今度は「国民怒りの声」という政治団体を組織し、参院選出馬を決めた。
メンバーは小林氏以外に公表されていないが、5月19日の記者会見で小林氏は、次のように胸を張った。
「できたばかりのまだ形になってもいない小さな党ですが、ありがたいことに2つの政党から対等合併の話を持ちかけられました。お誘いは、それだけで私たちを評価してくれているということで光栄なことですが、取り込まれては意味がないので丁寧にお断わり申し上げました」
学生団体SEALDsとも連携する小林氏の知名度と影響力に目をつけた「2つの政党」について、小林氏と親しい関係者はこう明かす。
「小林さんが出馬を表明した後、生活の党代表の小沢(一郎)さんから面会をしたいとの申し出があり、小林さんが出向く形で2人で会ったそうです。そのすぐ後、社民党党首の吉田(忠智)さんからも申し出があって、そちらは向こうがわざわざ小林さんを訪ねる形での面会になりました。両氏から選挙協力ではなく、対等合併の話を持ちかけられたそうです」
小林氏は記者会見の中で、このようにも語っている。
「私たちの無謀なチャレンジを評価してくださっているのでしたら、ご自分の党を抜けて来てくださいませんか、と申し上げました」
これが事実なら、小林氏は小沢氏、吉田氏の申し出を袖にして、「合併したいならそっちが来い」と啖呵を切ったことになる。2人の面目は丸つぶれだ。
小林氏を直撃すると、「党名やお名前を挙げるのは差し控えさせていただきます」との回答だったが、小沢氏に取材すると、「(合併話は)まったくの事実無根」、社民党は「面会はしたが、合併の話は持ちかけていない」との回答で、両者の話がかみ合わない。
「小林さんは政治家との付き合いも長い方ですが、小沢さんと吉田さんが合併話を否定していると耳にして、『政治家は信じられない』とこぼしていました」(前出・関係者)
早速、政界の洗礼を受けたということか。24日に行なわれた事務所開設の挨拶では、「ポスターはどうするのか?」という参加者の問いに、「そうだ、作らなきゃ」と慌てた小林氏。参院選の台風の目となれるのか──。
※週刊ポスト2016年6月10日号