鴻海精密工業に買収されたシャープ、不適切会計問題に揺れる東芝など、日本の家電メーカーには厳しいニュースばかりが続いている。しかしながら、長年培ってきた技術力、商品開発力は伊達ではない。中国人が欲しがるのも、やっぱり日本の家電だ。いま一度、「日の丸家電」の強みを見直そうではないか。
現代文学で描かれる電化製品を語った『電化文学列伝』の著者である芥川賞、大江賞作家の長嶋有氏が、かつての日本家電の魅力と今後への期待を語る。
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1980~1990年代、ソニーを筆頭とする日本の家電メーカーは本当にカッコ良かった。ロボット犬の「AIBO」を商品化しただけでもすごいし、ノートPCの「VAIO」はiMacに負けないデザインだった。当時はゲーム機の覇権をめぐる競争も面白かったし、PHSという日本独自の携帯電話を普及させようとする野心もあった。だが、この10年で目に見えて体力が落ち、元気を失っている感がある。
変化の一つに「競争がなくなったこと」がある。有名なVHS対ベータだけでなく、テレビゲームやメモリーカードの規格争いなんかも、何でもかんでも争っていた。全体でみれば効率的でないけど、尋常でない意地の張り合いや、個人の思いが商品にも垣間見え、それが面白かった。
効率を優先していくと、どれも似てくる。ソ連が密かに開発してたスペースシャトルが米NASA版とそっくりだったけど、自動車も家電も自然に画一化され突飛な製品が生まれなくなる。それが今の逆境につながったように見える。