高視聴率をキープしているNHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』。日々を大切に生きるヒロイン・常子を中心とした小橋家の奮闘ぶりが描かれるが、そんな一家を“声”で温かく見守っているのが「語り」を務める檀ふみさんだ。
常子のモチーフは、昭和23年に生活総合雑誌『暮しの手帖』を創刊した大橋鎭子さん。女性の暮らしを豊かにする知恵や工夫が詰まった同誌は、発行部数100万部を超す人気雑誌だった。檀さんは幼い頃、「最後の無頼派」といわれた父で作家の檀一雄さんが同誌で執筆していた関係で毎号自宅に届くそれを愛読していた。檀ふみさんが、『とと姉ちゃん』に対する思いを語る。
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私は『暮しの手帖』に育てられたところもあると思っています。ささやかな工夫が自分の暮らしを豊かにしていくという視点や、大量生産・大量消費の時代の中で「本当に必要なこととは?」「本当の幸せとは?」といったことを見極める目を養ってくれました。まだ小学校高学年くらいでしたけど、子供が読んでも面白い雑誌でしたね。
2008年に『暮しの手帖』が創刊60周年を記念して紙面を飾った「食」に関するエッセイを選んで1冊にまとめた本を出版された際には、選者を務めさせていただきました。平塚らいてうさんや木下順二さん、幸田文さんに石井桃子さん、その他、歴史上の偉人のような人たちがみなさん執筆していて驚きました。
ですから『とと姉ちゃん』のナレーションのお話をいただいた時は、ご縁を感じました。私、仕事選びに対してものすごく慎重なんですが、今回は二つ返事で引き受けました(笑い)。
常子のように早くはありませんが、私も1976年、私が21才の時に父を亡くしました。当時、大学に籍を置きながら女優としてのお仕事をしていたので、「私が一家を支えてきた」という思いがあるんです。昨年、母を亡くしましたが、母が生きている間は「私は母を守るために生まれてきたんじゃないかしら」と思ったこともありました。
だから、図々しいですけど「私も、とと姉ちゃんかも」って思っています。うちは「お父様」でも「お父さん」でもなく、「ちち」「ちちさん」と呼んでいたので、「とと姉ちゃん」ではなく「ちち姉ちゃん」ですけど(笑い)。
※女性セブン2016年6月9・16日号