プロ野球交流戦がもうすぐ始まる。昨シーズンのセ・パ交流戦を制したのは12勝6敗のソフトバンクで、パ・リーグ球団が上位5チームまでを独占した。なぜ、これほどセ・パに格差が生まれたのか。ヤクルト、巨人、阪神でプレーした経験のある野球評論家・広澤克実氏は、「セの野球はデータ重視の傾向が強く、パは『個の力』に重きを置く」と分析する。それが短期決戦の交流戦での打力の差につながるというのだ。
「バントや走塁まできめ細かい戦術を用いる傾向の強いセでは、野手は守れること、走れることが重視される。どのチームも巨人や阪神が理想とする、いわゆる“三拍子そろった”選手を求め、チームプレーや右方向へ打つ進塁打を指導してきた。その結果、セでは外国人選手を除いて、長距離砲が少ない。
一方のパでは、多少の欠点には目をつぶっても、飛ばすとか、足が速いとか、肩が強いといった“一芸”がある選手を大事にしてきた。日ハムの中田翔にしても、西武の中村剛也やメヒアにしても、セの球団のスカウトなら“パワーはあるが粗削りで足が遅い、守備も不安”と減点方式で獲得したがらない。
セの考え方は長丁場のペナントレースでは有効かもしれないが、短期の戦いでは中田や中村のような飛び抜けた能力を持つ選手のほうが結果を出しやすいんです」
昨季、打率4割2分9厘、5本塁打、10打点の大活躍で交流戦MVPに輝いたソフトバンクの柳田悠岐も、豪快なスイングをする「素材」として、広島六大学野球というマイナーなリーグ(広島経済大)からスカウトに拾われた選手だ。
さらに、「データ重視のセの野球だと、対戦数の少ない投手、データの揃っていない投手を攻略できない」(広澤氏)という問題が出てくる。
とくにセの中でも“初物に弱い”のは巨人の伝統で、昨季も日ハムのルーキー・有原航平に黒星を喫している。
「今年の有原は開幕5連勝と絶好調。対戦経験がほとんどないセのチームが攻略するのは難しい。若手ではロッテの3年目の石川歩も防御率1点台で今年は飛躍の年になりそうですが、やはりセのチームの対策は後手に回る」(スポーツ紙記者)とみられている。
「巨人は絶好調のエース・菅野(智之)できっちり勝てるかどうか。セのピッチャーでパの打者を抑えられそうなのは菅野くらい」(野球評論家・江本孟紀氏)というから巨人も苦戦を強いられそうだ。
※週刊ポスト2016年6月10日号