芸能

藤木直人、玉木宏の「名探偵」役に見る探偵物作品の新潮流

藤木直人が教授として”難事件”を解決

 探偵物のドラマや映画に最近、新たな傾向が見られるという。コラムニストのペリー荻野さんは、藤木直人、玉木宏が演じる”名探偵ぶり”に注目。そこから見える新潮流とは? 以下、ペリー荻野さんが解説する。

 * * *
 かつてドラマの探偵といえば、『犬神家の一族』などで知られる金田一耕助や、江戸川乱歩原作の明智小五郎のように変装がお約束といった個性的なプロ探偵が主流だった。しかし、近年は福山雅治の『ガリレオ』に代表されるような「二枚目、個性派、天才学者、副業」が名探偵の条件となっている。

 たとえば先日放送された藤木直人主演の『帝都大学叡古教授の事件簿』(テレビ朝日系)。藤木演じる宇野辺叡古は帝都大学法学部教授で森羅万象あらゆる学問に通じ、「知の巨人」と呼ばれる天才博士。彼は、ダメ刑事(田中直紀)とともに医学部教授が殺害されて講堂の天井から吊るされ、謎の数字が記されるといった奇怪な連続殺人事件の捜査に関わる。
 
 叡古教授のライバルともいえるのが、ドラマ版が昨年放送された玉木宏の御手洗潔。こちらはIQ300超の天才脳科学者。探偵が趣味で、警察が難渋している事件を解決し続けている。最新作の映画『探偵ミタライの事件簿 星籠の海』では、身元不明の六人もの死体が次々流れ着く「死体島」や外国人女性変死事件、赤ちゃん誘拐殺人事件と三つの事件が勃発。

 中でも赤ちゃんの事件では、赤ちゃんの両親が捕まって、目や口を縫い合わされるという衝撃的な展開に! ひえーっ。こんなに大変な事件が三つもあって、さらに幕末から続く「星籠」の秘密まで解き明かすというんじゃ、映画はいくら時間があっても足りないでしょ?と思ったら、なんと二時間弱で決着!! さすが早撮りとスピーディーな展開を得意とする『相棒』の和泉聖治監督である。

 面白すぎるふたりの名探偵だが、外見もキャラクターもずいぶん違う。藤木の叡古教授は、ストライプのスーツに蝶ネクタイ、杖とパイプがトレードマークのすらりとした紳士。初登場シーンでは、後光がさす中、ゆやーん、ゆよーんと中原中也の詩を口ずさみながら優雅に現れる。どんな深刻な状況でも「そこに物語はあるのか」がポイントという完全文系先生である。

 勤務先の大学には好奇心旺盛な娘(清水富美加)もいて、恐妻家ながら私生活も充実しているらしい。しかし、パソコンも携帯も使わず、車も運転しない。犯人がわかった! 関係者が危ない! でも、助けに行く先生、自転車移動なんですね…。

 一方、玉木の御手洗先生は、ジーンズにTシャツ、ベージュのコートというラフな格好で、「死体島」に興味を示した次の瞬間には即出張態勢という身軽な男。脳科学を愛する完璧理系で、もちろんスマホもパワポもお手の物。ただし、私生活は謎である。

 玉木宏は『あさが来た』の若旦那でさらにファン層を拡大した直後、藤木直人も『私、結婚できないんじゃなくて、しないんです』の超毒舌男で注目を集めている。ふたりともいいタイミングでの知的探偵役登板。叡古先生も御手洗先生も映像シリーズ化が期待されていることと思う。さらに二時間ドラマ枠では、「金田一耕助VS明智小五郎」とか「終着駅の牛尾刑事VS事件記者冴子」など驚くべき対決ドラマも実現してきた。シリーズ化が進めば、いつかふたりのイケメン天才探偵の対決企画もあるかもしれない。

 ただでさえ難事件だらけなのに、ふたりが対決したらどれほどすごい事件になるのか。凡人には想像すらできません。

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